二十三夜待ち 第五章
二十三夜待ち 第五章
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小鶴は声がする闇に眼を凝らした。
そこには月光を映した男と女の裸身があった。二人は立ったまま抱き合い、もどかしそうに肌と肌を擦り重ねている。
「もっと・・もっと強く抱き締めて・・」
大理石のように滑々して丸身を帯びた女の体が、筋肉質な男の腕の中でくねくねと何度もしなる。
その艶めかしさに小鶴は息を呑んだ。
おそらく月の光がなくとも、女の体は白磁器のように透き通っているのだろう。
その肌を僅かな青みを含む月光が照らすことで、ぞっとするほど凄絶な神秘を宿している。
豊かで肉づきのいい尻でさえ、天界から舞い降りた吉祥天のような神々しさを小鶴は感じた。
(はあ、はあ、はあ・・)
天女の尻が男の手で揉みしだかれる様に、小鶴は神々の営みを覗き見る恍惚感に酔い、未通女でありながら、自分の膨らまぬ乳房を撫でて息を荒げた。
女は立木に抱きかかえるように、体を屈めて男に尻を突き出した。
「ああ、欲しいの・・あなたが欲しくて我慢できない・・」
豊かな乳房を揺らして女が誘うと、男は背後から尻を鷲づかみにして腰を押し当てた。
「いいっ、清一君が入って来るっ!」
女が上半身をのけ反らせた刹那、青い月光が木の陰になっていたその顔を映し出した。
(あっ!)
小鶴は声を出しそうになって慌てて口許を塞いだ。
後ろに結った髪を下ろしてはいたが、その美貌は仄暗い闇でも瞬時に判別できた。
(わ、若奥様・・)
女はかつての女教師、今は小鶴が奉公する睦沢家の嫁、千代だった。
続く…






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