二十三夜待ち 第七章
二十三夜待ち 第七章
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天井一面に天女の絵が描かれていた。
寺や神社の天井画には、八方睨みの龍や飛天する天女があしらわれている。
だがこの月讀神社の天女は異質だった。
平安時代の貴族を想わせる大和絵の描き方ではなく、まるで西洋画の写実主義の如く、精密なデッサンを基に細部に亘るまで写真のように描かれていた。
しかも天女は全裸で宙を舞っていた。
うっとりした瞳と半開きの口唇が、神社に相応しくない艶めかしく官能的な表情をつくっている。
恍惚の天女。
子供を産んだ女なのだろうか、下腹部はむっちりとし豊饒に描かれている。
まるで実際のモデルを写生したように、顔の表情はおろか乳暈の粟立ち一つ一つや、淡く秘部を覆う細毛の一本一本まで、詳細かつ執念深く細密に描き込まれていた。
「・・これは子供に見せられないでしょ?」
唖然とする息子を尻目に、老婆は天井画に手を合わせた。
「若奥様、小鶴が帰って参りました」
老婆はそう言うと、遠い昔を思い出すかのように静かに目を閉じた。
続く…
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