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『人外境の花嫁』一.異界の漂泊民(九)

『人外境の花嫁』 

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一.異界の漂泊民 (九)

どきっとして寛三は目を反らした。

「い、いや・・いいんだよ。どうせ客もいないから・・そうだ、お嬢ちゃんもやってみるかい?」

まだ乳房とも呼べぬ膨らみに惑わされた寛三は、その羞恥を誤魔化すように、慌てて少女にヨーヨー釣り紐を渡した。

少女は原色の玩具に目を輝かせた。

「でも・・」

「さあ、姉弟でどっちが先に釣れるかな?」

寛三が煽ると、弟を叱ったはずの少女は水槽の前にかぶりついた。

一瞬、寛三は目を疑った。

「えっ?」

真剣にヨーヨーを睨んだ少女が、丁半の壺振りさながらに、ばっと上半身もろ肌脱いだのだった。

褐色に日焼けした裸身が、アセチレンランプの下で露になった。

おそらく袖が邪魔になるからだろうか、少女は周囲の目など気にせず、半裸のまま釣り紐を持ってヨーヨーを狙った。

「あっ、くやしいっ!」

W型の金具がヨーヨーのゴム輪をかすめるたびに、少女は大きな声を上げて地団駄を踏んだ。

まだ膨らみかけの青い乳房が、寛三の目の前でぷるぷると上下に踊る。

寛三はぽかんと口を開けたまま、少女の裸身を目で追うしかなかった。

(幼いのか?)

見たところ少女は十五歳前後だろう。

初潮を迎えて乳房が膨らめば、いくら男勝りの娘でも女として恥じらいを自覚する。

ところが少女は、女であることをまるで意識していないようだった。

つづく…

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『人外境の花嫁』一.異界の漂泊民(八)

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一.異界の漂泊民 (八)

戦争が終わって十年が経つ。

もはや戦後の荒廃は跡かたもなく、日本は経済成長の道を突き進んでいる。

家・車・テレビジョン・洗濯機。

豊かな生活に乗り遅れまいと、大人は目の色を変えて働き、子供は有名大学を目指して受験勉強に余念がない。

そんな世知辛い世相が蔓延した日本で、住所不定、義務教育を受けていない子供がいるなど、寛三は俄かに信じられなかった。

(ミソソクリ?)

頭の中を整理できないまま、寛三は少年にW型の金具がついたヨーヨーの釣り針を渡してやった。

不意に少年の背後に人影が迫った。

「あんた、何しよるの!」

「姉ちゃん」

少年は頭を叩かれ、ヨーヨーの釣り紐を水槽に落ちした。

先ほど杉林の蔭にいた少女だった。

アセチレンランプに照らされた少女は、中●生ぐらいの年頃だろうか、黒髪をお下げに愛らしく結っている。

だが少年と同じで着ているものは汚くみすぼらしかった。

地味なかすりの着物に、かつては黄色だったと思われる茶色の帯を巻いている。

おそらく子供の頃につくったのか、丈は寸足らずですっかり膝が見えていた。

少女は弟の頭を押さえて寛三に謝った。

「ごめんなさい。私達お金は持っていないんです」

少女が腰を屈めると、ゆるい襟の合わせから、膨らみ始めたばかりの乳房がちらっと覗いた。

つづく…

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『人外境の花嫁』一.異界の漂泊民(七)

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一.異界の漂泊民 (七)

寛三は少年に声をかけてみた。

「坊主、ヨーヨー釣りがしたいのか?」

「うん」

きらきらと目を輝かせる少年は無邪気に頷いた。

「坊主はこの一木集落の子供か?」

「ううん、オレ、山に住んどる」

少年はたどたどしく答えると、すっかり陽が暮れた山々を指差した。

「そうか、まだ山奥に猟師か炭焼きの家があるんだな」

寛三は合点がいった。

深山に住む者ならば、現代の生活から取り残されていても不思議ではない。

だが少年は首を振った。

「オレ、ミソソクリじゃけん、家は持たん」

「ミ、ミソ・・?」

九州地方の方言だろうか、寛三には少年の言葉がよくわからなかった。

「しかし家を持たんって・・それならどこで飯を食う? どこで寝ているんだ?」

「山の河原じゃ。洞穴があればそこで暮らすこともある」

「・・それじゃ物乞いじゃないか」

「オレらは物乞いじゃない。大きな山をいくつも越えて、あちこちの村を回って商売しとる。だから家などあったら邪魔になろう?」

ふんと笑った少年は、鼻から垂れた青っ洟を袖で拭った。

確かに世の中には、昔から各地を渡り歩く稼業がある。

旅役者、サーカス、薬売り、養蜂家、むろん寛三が稼業とする香具師もそうだ。だがそれは出稼ぎに近く、定住する家がないわけではない。

寛三は困惑した。

「でも小学校へは行っているんだろう?」

「行かん。ミソソクリは学校など行かんでもいい」

少年は急に語気を強めたが、少し目を伏せて悲しそうな表情を見せた。

つづく…

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『人外境の花嫁』一.異界の漂泊民(六)

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一.異界の漂泊民(六)

やるせない光景だった。

戦争で両親を失った戦災孤児が、焼け野原となった横浜に溢れていた。

駅や公園で野宿をしながら、靴磨きや物乞い、集団で窃盗に手を染める子供達もいた。

結局彼等は社会から見捨てられ、愚連隊やヤクザに身を落とした者が多かった。

寛三も両親を横浜大空襲で失った。

浮浪児と呼ばれる年齢ではなかったが、二つ年上の兄とともに、住む家を焼かれて食べるものにも事欠く日々を送った。

兄弟二人でバラックの家を建て、米や芋を求めて農村へ買い出しに回った。

生きるのに必死だった。

だが生きるためだと言いながら、勇ましく一億玉砕を叫んでいた人々は、一夜にして米兵の軍靴を舐めんばかりに跪いた。

子供はチューインガムを、男は米軍キャンプの金網越しに残飯シチューを物乞いした。

そして貞操のため自決を覚悟した女も、ネオンの巷で米兵に両脚を開き、競い合ってその妾になろうとする始末だった。

鬼畜米英は何処へ行ったのか。

両親は何のために死んだのか。

犠牲者である浮浪児を蔑ろにして、敵国に頬ずりする厚顔無恥な社会に、寛三は今も激しい憤りを捨てきれずにいた。

ふと寛三は我に返って、あどけない少年の顔を見た。

(だがここは都会ではない)

浮浪児が貧しくとも生き残れたのは、たくさんの人が行き交う都会だったからである。

靴磨きにしてもスリにしても、山奥の集落では、稼ぐ余力など皆無に等しいだろう。

山の恵みで生きるにしても、年端もいかぬ少年では、ウサギ一羽狩ることもできないはずではないか。

つづく…

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『人外境の花嫁』一.異界の漂泊民(五)

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一.異界の漂泊民(五)

不意に強い風が山から吹いてきた。

境内の裏に迫る森がざわっと騒いだ。

露店の幟や暖簾がはためき、アセチレンランプの光がゆらゆらと揺れた。

暗がりとなった御神木の辺りに、寛三は小さな人影か動くのを見た。

(おや、子供か?)

小●生低学年ぐらいの少年と中●生ぐらいの少女が、こちらの様子を窺っているようだった。

祭に来た姉弟だろうか、それにしてはいつまでも森の木陰から出て来ようとしない。

寛三はその姿に違和感を覚えた。

目を凝らすと、洋服が当たり前の昨今、二人ともぼろぼろの着物を身につけていた。

しかも髪はぼさぼさで、今年封切られた『七人の侍』に出てくる百姓のようだった。

二人は言い争っていた。

露店へ行きたがる少年を、年上の少女が懸命に宥めているように見えた。

だがアセチレンランプの誘惑に堪えられなかったのか、少年は少女の手を振り切って露店へ駆け寄ってきた。

「夜なのに昼間みたいだ」

少年は一頻り露店の間をはしゃぎ回ると、ヨーヨーが浮く水槽の前にしゃがみ込んだ。

「わあ、きれいじゃ」

目を丸くした少年の円らな瞳に、色取り取りのヨーヨーが写っている。

明るいところで見ると、やはり集落の子供達とは違って、少年の身なりはひどくみすぼらしかった。

垢と埃でごわごわになった着物は、黒光りするほどに汚れ、むっと鼻を突く獣のような臭いがした。

(浮浪児か?)

寛三は少年の姿を見て、忘れかけていた終戦直後の横浜を思い返した。

つづく…

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紅殻格子 

Author:紅殻格子 
紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

繊細な人間描写で綴る芳醇な官能世界をご堪能ください。

ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
児童文学 『プリン』
  
『プリン』を読む
臆病で甘えん坊だった仔馬は、サラブレッドの頂点を目指す名馬へと成長する。
『プリン』
だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
『プリン』を読む

作 品 紹 介
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