『人外境の花嫁』八.山奥の探索者(十一)
『人外境の花嫁』
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八.山奥の探索者 (十一)
得体の知れぬ不安が月絵を覆った。
「天神会は凶暴な一面を隠している可能性がある」
横浜で降矢木が語った言葉が、今この巨大な要塞を前にして、急に現実味を帯びて月絵に襲いかかってきた。
もしここで天神会が牙を剥けば、歩いて逃げることはもちろん、助けを求める人すら見当たらないのだ。
その時、不意に天神会の正門が開いた。
するとその頑丈な城門から、一人また一人と、作務衣を着た男達がぞろぞろこちらへ向かってくる。
山奥に似つかわしくない若い男達だった。
皆二十代ぐらいだろうか、茶髪やロン毛の若者達で、渋谷駅前の交差点と錯覚するような光景である。
「おや、盛大なお迎えだな」
呑気に手を振る畠山のシャツを月絵が引っ張った。
月絵は若者達の態度に尋常ならざるものを感じた。
目線が定まらす、口を半開きにしてへらへら笑っている。
じっと立っていることができず、落ち着きなく無意味に手足を動かしている。
「畠山さん、ちょっと変よ。ここから逃げましょう」
「何を言っているの、月絵ちゃん。やっとここまで来たのに・・えっ」
さすがに鈍感な畠山も、若者達が持つ木刀や鉄パイプに気づいて口を噤んだ。
だがすでに月絵と畠山は、二十人ほどの若者に取り囲まれていた。
つづく…
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紅殻格子の日記は「黄昏時、西の紅色空に浮かぶ三日月」に記載しています。
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もしここで天神会が牙を剥けば、歩いて逃げることはもちろん、助けを求める人すら見当たらないのだ。
その時、不意に天神会の正門が開いた。
するとその頑丈な城門から、一人また一人と、作務衣を着た男達がぞろぞろこちらへ向かってくる。
山奥に似つかわしくない若い男達だった。
皆二十代ぐらいだろうか、茶髪やロン毛の若者達で、渋谷駅前の交差点と錯覚するような光景である。
「おや、盛大なお迎えだな」
呑気に手を振る畠山のシャツを月絵が引っ張った。
月絵は若者達の態度に尋常ならざるものを感じた。
目線が定まらす、口を半開きにしてへらへら笑っている。
じっと立っていることができず、落ち着きなく無意味に手足を動かしている。
「畠山さん、ちょっと変よ。ここから逃げましょう」
「何を言っているの、月絵ちゃん。やっとここまで来たのに・・えっ」
さすがに鈍感な畠山も、若者達が持つ木刀や鉄パイプに気づいて口を噤んだ。
だがすでに月絵と畠山は、二十人ほどの若者に取り囲まれていた。
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