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『風媒花』・・・第二十一章

『風 媒 花』
  第二十一章

すぐに絶頂はやって来た。
知彦は美幸の花奥から慌てて肉茎を抜こうとした。

「ダメ、抜いちゃダメ」

「で、でも・・」

「いいの・・中に・・お願いだから、中に出して!」

いきなり美幸は、知彦の腰を両手で抱えるように押さえ込んだ。

「い、いきます・・」

知彦は小さく告げると、ぎゅっと締めつける美幸の中へ、間歇的に精液を吐き出した。
美幸はひくひくと花奥を痙攣させながら、知彦の精液を奥まで受け入れたのだった。

夜が明けた。
知彦は自分の部屋で目を覚ました。

(昨夜のことは現実だったのだろうか?)

だがそれが夢でない証拠に、筋肉痛で体が悲鳴を上げていた。
呆とした頭で知彦は食堂へ向かった。
食堂の扉を開けると番頭が朝食を運んできた。

「おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」

「ええ、温泉で体が温まったから、それほど寒くありませんでした。ところで昨夜泊まっていたご夫婦は?」

「ああ、館内さんですか。もうとっくに出かけられましたよ」

知彦はほっとした。
美幸の顔をもう一度見たかったが、一馬と顔を合わせるのはさすがにばつが悪かった。

「あのご夫婦はよく来られるんですか?」

「ええ、三ヶ月に一度ぐらいでしょうか。ご夫婦はお子さんができないらしく、この温泉に足繁く通って来られます」

「子供ができない?」

「はあ、この熱塩温泉は子宝の湯として有名でして」

「子宝の湯?」
つづく・・・
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『風媒花』・・・第二十二章

『風 媒 花』
  第二十二章

知彦の脳に稲妻が走った。

「お願いだから、中に出して!」

絶頂を迎えた美幸の叫びが耳に蘇る。
知彦は妊娠する心配がない日だと早合点した。
だがあの積極的な美幸の態度が、受精を求める雌の本能だったとすれば・・

「ところで・・久喜君の血液型は?」

あの時、何故一馬は知彦の血液型を聞いたのか。
そして知彦が美幸と交わっていた時、あの背後に感じた視線は・・
知彦は顔面蒼白になった。

(まさか・・)

もし一馬が男性の不妊症ならば、旧家の血筋を絶やさないために、病院で人工授精を試みるに違いない。
男性が無精子である場合、医学生など第三者から精子の提供を受ける。
だがその精子の提供者は、生涯決して明かされることがないと言う。

(館内夫婦がそれを望まなかったとすれば)

一馬は、自分が選んだ男の遺伝子で、美幸を妊娠させたかったのだ。
そして白羽の矢が知彦に立った。
あの夜、酒盛りが始まる前、夫婦は知彦について議論を交わしたはずだ。

そして一馬も美幸も、知彦の遺伝子を自分達の子供とする決意をしたのだ。
むろん一馬は酔って寝た振りをして、美幸が受精する瞬間を隣室から見守っていたに違いない。

知彦は箸を持ったまま凍りついた。
昨日より会津の空は青く晴れていたが、知彦の心には、どんよりと黒い雲が一面に低く垂れこんでいた。
つづく・・・
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『風媒花』・・・第二十三章

『風 媒 花』
  第二十三章

遠くで清子の声がした。

「・・あなた、あなたったら」

知彦は夢から醒めたようにぼんやりと清子を見返した。

「やあねぇ、いくら呼んでも返事をしないんだから」

「ああ、ちょっと考えごとをしていたんだ」

知彦はテーブルのビール瓶をつかむと、清子と自分のグラスに注ぎ足した。
まだ娘の香織とその恋人は現れない。
再び知彦は、窓の下を行き交う雑踏へ目を遣った。

強い風が吹いた。
店頭の幟が一斉にはためき、街路樹の枯葉が善鄰門を越えて夜空へと舞い上がった。

(風媒花・・か・・)

スギやヤナギのように、花粉の媒介を風に頼る植物を風媒花と言う。
美幸は風だった。
知彦の遺伝子は、あの夜、美幸と言う風に運び去られたのだ。

(どこまで飛んで行ったのか・・)

美幸の卵子と結合した知彦の遺伝子は、遥か遠い街で、生命として根を下ろしたのだろうか。
知彦そっくりの子供が、実の父親も知らない街で暮らしているのだろうか。
急に知彦は現実へ引き戻された。

「彼ね、パパに似ているんだ」

香織の言葉が妙なリアリティーをもって耳朶に蘇った。
慌てて知彦は清子に聞いた。

「一哉君は何歳なんだ?」

「三十か三十一歳だって聞いたけど」

「仙台で大きな会社を経営している家の一人息子だったな」

「そ、そうよ」

ぼんやりしていた知彦の急変ぶりに、清子は吃驚したように目を丸くした。
つづく・・・
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『風媒花』・・・最終章

『風 媒 花』
  最終章

一馬と一哉、三十二年前、一人息子、仙台で会社経営――先ほど感じた胸騒ぎが、次第に現実味を帯びて知彦に覆い被さってきた。
意を決した知彦は清子に尋ねた。

「か、一哉君の苗字を知っているか?」

「ええ、確か館内って言っていたわ」

知彦は顔から血の気が引くのがわかった。

(嘘だ・・あり得ないことだ・・あってはならない偶然だ・・)

風で運ばれた遺伝子が、逆風に乗って再び戻って来たとしたら、因果応報の業火で知彦は身を炙られなければならない。
知彦は狂わんばかりに懊悩した。

兄妹婚など許されるはずがない。
だが三十二年前の出来事を公にすれば、生木を裂かれた香織は、知彦を信じてきた清子は、幸せな久喜家は、火達
磨となって修羅場へと転落するに違いない。
知彦のグラスを持つ手が震えた。

(落ち着け。まだ自分の子供と決まったわけじゃない)

美幸が産んだ子が男だとは限らない。
顔が似ていても他人の空似と言う故事もある。

館内姓など日本にいくらでも住んでいる。
仙台にだって館内と名乗る旧家は腐るほどあるはずだ。
清子が心配そうに知彦の顔を覗き込んだ。

「どうしたの? あなた、顔が真っ青よ」

「・・あ、ああ」

知彦が額の汗を拭った時、突然個室の扉が開いて香織が現れた。

「遅くなってごめんなさい。なかなか駐車場が見つからなかったの」

息を切らした香織の背後に、黒い影が控えているのを知彦は見た。

「いいから早く入りなさい」

清子が香織を個室に招き入れた。

「えへへ・・その前に紹介します。私がおつきあいしている館内一哉さんです」

その黒い影がぬっと前に立ちはだかった。
知彦は恐る恐るその顔を見上げた。
   ――閉幕――
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紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

表のメディアで満たせない性の妄想を描くためブログ開設

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ご挨拶
「妄想の座敷牢に」お越しくださいまして ありがとうございます。 ブログ内は性的描写が多く 含まれております。 不快と思われる方、 18歳未満の方の閲覧は お断りさせていただきます。               
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だが彼が探し求めていたものは、 競走馬の名誉でも栄光でもなかった。ちまちました素人ファンタジーが横行する日本の童話界へ、椋鳩十を愛する官能作家が、骨太のストーリーを引っ提げて殴り込みをかける。
日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
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