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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(二十一)

『人外境の花嫁』 

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七.迷宮の案内者 (二十一)

三角寛は、その実地調査記録とも言うべき『山窩物語』の中で、サンカの大親分である乱裁道宗について述べている。

そもそも道宗は、平安時代中期、関白藤原道隆が下賤な女に産ませた隠し子だった。

神罰を恐れた道隆は、八歳の道宗を丹波の山奥へ捨てさせた。

その際に多くの家臣が道宗とともに山へ入ったと言う。

道宗は乱裁の姓を名乗り、家臣達と共に山奥に住む民の首長となった。

サンカの持つ箕つくりや薬草の知識、猟、セブリでの移動生活などは、乱裁道宗が創始者であり、サンカは独自の生活スタイルを
構築して発展した。

彼等は厳格な身分制度をつくり、乱裁道宗を頂点とした組織は全国の山奥に住むサンカへ分散していった。

爾来、全国サンカの統領は、乱裁道宗とか丹波道宗などと称され、歴史の陰で脈々と世襲制で受け継がれていくのである。

秋月は感心してうなった。

「壮大な話だねえ」

「まあ、三角寛が考えたのか、誰かの入れ知恵だったのかはわかりませんが、恐ろしいほどの妄想力だと思いますね。


ただサンカの始祖を乱裁道宗だとすると、神代文字と似たサンカ文字の由来は怪しくなるのですがね」

そう言うと、降矢木はやや皮肉っぽい表情で笑った。

月絵が訊ねた。

「でも先生、すると天神会は名を替えたサンカの集団かもしれませんね」

「いや、サンカの漂泊生活は、昭和四十年代には観察されなくなっている」

「えっ、それならサンカはどこへ行ってしまったんですか?」

山奥の獣道を家族で歩くサンカを思い浮かべながら、月絵はどこか切ない気持で降矢木に確かめた。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(二十二)

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七.迷宮の案内者 (二十二)

降矢木も僅かに寂しげな表情を見せた。

「日本から闇が無くなったということだ」

「闇ですか?」

「そう。文明の進歩は、この国から人外の異界を干上がらせてしまった。平安時代、都の外は鬼が棲む闇の領域だった。そこは人間の知性が届かぬ異界であり、恐怖と畏敬が常に隣り合わせで存在していた」

「ええ、確かに現代は情報手段の発達で、日本全体が同じ価値観を共有していますね」

「文明がもたらすものは画一化だ。多様性は自律的に排除され、他人と同じであることが無意識に強制される」

降矢木の言葉は厳しい。

文明に刷り込まれた価値観は、本来自由で多様化すべき人間を一つの型に嵌め込んでしまうのである。

「異質なものは世の中に潰される。サンカの漂泊生活然り、水上生活者も、乞食という職業もね」

「・・他人と同じであることが、幸せの必要最低条件だと・・」

「そうだ。だからサンカは戸籍もなく漂泊していられなくなった。溶け込みと言って、定住することを選んだのだよ。漂泊生活で、学校へも通わない子供の将来が、この国では許されないと悟ったのかもしれないね」

むろんプラスチック製品に押されて、竹細工の箕が売れなくなったこともあるが、世相が異界人を許すゆとりがなくなったのかもしれない。

つづく…

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『人外境の花嫁』七.迷宮の案内者(二十三)

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七.迷宮の案内者 (二十三)

一同無言で顔を見合わせた。

そこで畠山がぽつりと呟くように言った。

「これは密かに教えてもらった情報ですが、天神会は現在、後継者選びで分裂の危機にあるそうですよ」

「何っ、詳しく話したまえ」

身を乗り出した降矢木に、思わず畠山は吃驚して上半身を反らせた。

乱裁道宗は今年八十一歳になる。

ところが教団が急に拡大したため、次代乱裁を名乗る後継者が決まっていないと言う。

現在、四天王と呼ばれる教団の実力者は、東京、名古屋、大阪、福岡の主要支部を管轄している。

それぞれ四十代の若さで、もし後継指名されなければ、天神会を割って分派独立する可能性が強いらしい。

「だから乱裁に後継者となる子供でもいればよかったのでしょうが・・」

そう言いかけて、畠山ははっと掌で口を押さえた。

降矢木はにやっと笑った。

「そう、もし乱裁道宗が足立寛三であれば、麻美さんは彼の近親者、否、娘に当たる可能性も否定はできない」

だが金治が横から口を挟んだ。

「だが寛三兄貴には、香具師の頃に別れた妻と娘がおった」

「天神会が何かサンカと関連があるならば、その後継者はサンカの血を引く者である方がいい。畠山君、そのホームページに乱裁道宗の写真は掲示されていないのかね?」

「あ、あります」

畠山はノートバソコンの画面を金治の目の前で開いた。

乱裁道宗。

仙人のような白髪白髭の老人。

目を凝らした金治の表情が強張った。

「・・寛三兄貴だ。年は取っているが、若い頃の兄貴の面影が残っている」

絞り出すような金治の言葉に、周囲の四人はしばらく誰もが口を噤んでいた。

つづく…

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紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

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日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
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