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『あやかしの肌』・・・第二十一章

     『あやかしの肌』
第二十一章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

激動の昭和三十五年も師走を迎えた。
政治から経済への転換。
安保闘争に始まったこの年は、社会党の浅沼委員長刺殺を経て、池田勇人の国民所得倍増計画で暮れようとしていた。

松飾りが目につくようになった神田でも、得意先回りに奔走するサラリーマンと、つけの取り立てに目を光らせる飲み屋のママが、街中で仁義なき追い駆けっこを繰り広げていた。

辰二は美千代の部屋で目を覚ました。
年末の忙しさとは無縁に、窓から射し込む昼下がりの太陽が、厳冬に柔らかな陽だまりをつくっている。

「ねえ、あんた・・」

布団に寝そべった全裸の美千代が、気だるそうに辰二を呼んだ。
昨夜店を閉めた後、愛し合った姿のまま、二人とも眠ってしまったらしい。

「もう昼か・・」

辰二は朦朧としながら、上半身を起こした美千代の背中を撫でた。
明るい陽射しを浴びた美千代の肌は、夜とはまた違った自堕落な淫靡さを湛えている。

体を重ねてから半年近くが経った。
美千代の肌に憑かれた辰二は、その温もりを布団代わりに、毎夜のように居続けを続けていた。
乱れた夜着を肩にかけた美千代は、背中を向けて髪を結い上げながら急かした。

「いつまで触っているんだい。ほら、早く支度しなよ。もう釜を焚く時間だろう?」

「・・ああ」

「しっかり稼がないと、この部屋に入れてやらないからね」

冷たく言い放った美千代は、辰二に向ってブリーフを投げつけた。
つづく・・・

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『あやかしの肌』・・・第二十二章

     『あやかしの肌』
第二十二章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

美千代は悪女だった。
男を虜にする肌の魅惑を、美千代は十二分に知っていた。
大店の隠居に近づいたのも、元から手切れ金をせしめるのが目的だった。

隠居だけではない。
その美肌を武器に、芸者時代から数多の男達を手玉にとってきたらしい。

それは辰二にも例外ではなかった。
美千代は肉欲を満たしてもらいながらも、染みついた習性で、軌道に乗らない店の資金援助を辰二にねだった。

むろん辰二にも、堅気の男が扱える女でないことはわかっていた。
だが魔肌には逆らえなかった。

月々の給金もとより、十五年こつこつ貯めた銭湯の開業資金も、美千代のために貢ぎ果たしていた。
美千代が怜悧な目で辰二を睨みつけた。

「ほら、ぐずぐずしなさんな。あたしはヒモを養えるほど金持ちじゃないんだからさ」

「・・実は」

「どうしたのさ」

「銭湯を辞めてきたんだ・・」

辰二が気まり悪そうに呟くと、美千代は夜叉のような表情で振り向いた。
昨日。
久しぶりに竹の湯に立ち寄ると、主人の盛吉が鬼のような顔で立ちはだかった。

「タツ、お前最近仕事に身が入っていないみたいだな」

「い、いえ、そんなことは・・」

口では否定したが、辰二はこの一カ月で十日も休みをとっていた。
夜明けまで続く美千代との情事が原因だった。
仕事へ出ても釜場でぼんやりすることが多く、湯の温度が低いと客から苦情が殺到した。

「質の悪い女とつきあっているらしいな。裏通りの美千代だって聞いているぜ」

「・・はあ」
つづく・・・
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『あやかしの肌』・・・第二十三章

     『あやかしの肌』
第二十三章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

細かいことを咎める盛吉ではない。
だが住み込みの部屋にも戻らず、放蕩する辰二に堪忍袋の緒を切らせたのだろう。

「おいタツ、美千代は海千山千だ。お前みたいな素人じゃ、いいように血を吸われて捨てられるだけだぞ」

「・・・・」

「目を覚ませ、タツ。せっかくここまで修行してきたんだ。俺が立派な風呂屋の主人にしてやる。しっかり者の嫁さんだって見つけてやる」

盛吉は目に涙を浮かべて、辰二の肩を激しく揺すった。
母とは幼い頃に生き別れ、父は辰二が出征中に山で事故死した。

兵隊から戻ってきた辰二を、知辺ない東京で面倒看てくれたのは盛吉だった。
親代わりでもある盛吉の温情が心に沁み入った。

「銭湯の主人になるか、美千代の情夫になるのか、はっきりしろいっ!」

黙りこくった辰二に、盛吉は厳しい口調で改悛を迫った。
大恩ある盛吉を裏切りたくはなかった。

だが美千代の肌は、すでに辰二の体と融け合っていた。
わざと辰二は毒づいた。

「・・ふん、世は高度成長だ。銭湯なんて時代遅れなんだよ。そんな未来のない商売はこっちから御免蒙るさ」

ぶるぶると拳を握り締める盛吉に、辰二はふうっとタバコの煙を吹きかけた。

「タ、タツ、お前・・今のお前は正気じゃない。親父が女狐に騙されたように、お前も一時の欲情で美千代に血迷っているんだぞ」

「親父が母さんに騙された?」

「そうだ、お前の親父は女房に裏切られて自殺したんだ」
つづく・・・
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『あやかしの肌』・・・第二十四章

     『あやかしの肌』
第二十四章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

辰二は盛吉の話に耳を疑った。
田舎の親戚連中は、父は山の切り立った崖から滑落死したと聞いていた。
若い頃は狩猟が趣味だった父なので、辰二は疑う気など当時から微塵も抱かなかった。

「う、嘘だ」

「崖から落ちたのは本当だ。お前には隠していたが、後から遺書が見つかったんだよ」

「・・・・」

「お前がまっとうなら話すつもりもなかったが、父親と同じ末路を歩かせるわけにはいかない。もう一度だけ冷静になって考え直せ」

父と又従兄弟に当たる盛吉は、幼い辰二を残して家を出た母のことから話し始めた。
年号が昭和に変わった頃。
辰二の生家は、信州の山奥にある集落で、代々村役人を務める名家だった。

東京で学生生活を送っていた父は、カフェの女給だった母を見染めて田舎へ連れて帰った。
当時モガと呼ばれた洋装の母を見て、親族は大反対したものの、父の熱意に押されて結婚を許した。

やがて夫婦は男児二人に恵まれた。
だが母は山に囲まれた平凡な田舎暮らしに馴染めなかった。
子供が乳離れすると、母は生来の奔放な性格を持て余した。

モダンな洋装で村を歩く母に、男達は好奇の視線を注いだ。
そして山村では滅多に見られない真っ白い肌に、淫らな妄想を掻き立てられた。

しばらくすると奇妙な噂が広まった。
村を訪れる博労が、深夜村外れのお堂で裸弁天を見たと言う。

真っ白な肌に月の光を映した裸弁天に、五六人の男達が次々に絡みついていく。
その肌に触れただけで、何度でも男達は欲情して精を吸い取られたと博労は語った。
つづく・・・
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『あやかしの肌』・・・第二十五章

     『あやかしの肌』
第二十五章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

裸弁天は母だった。
そもそもは、母が小作人の若い青年を誘惑したことから始まった。

二人は夜な夜なお堂で秘めやかな情事を繰り返した。
すると通りすがりの旅人や、噂を聞いた村の男達が加わるようになり、裸弁天を祭る淫らな宴に変わっていったらしい。

当然その噂は父や親族の耳にも入った。
怒り狂った親族達は、一刻も早く母を追い出すように父へ迫った。

だが父は逡巡した。
不貞を働いたにもかかわらず、母への未練から赦そうとしたらしい。
結局、祖父が決断を下し、母から幼い子供を取り上げて東京へ追い返したのだった。

母と別れた父は腑抜けになった。
辰二の記憶でも、父はいつも鬱々と口数が少なく、自分の部屋に閉じ籠っていることが多かった。

今思えば、精神的に病んでいたからかもしれない。
そして辰二が出征してしまうと、父は山に分け入り自ら命を絶った。
盛吉はそこまで話すと、ふうっとため息をついた。

「だからな、美千代の色香なんか一時の迷いで・・お、おいタツ!」

かっと憤怒に顔を赤く上気させた辰二は、盛吉の足許に煙草の箱を投げつけ、竹の湯を飛び出した。
つづく・・・
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『あやかしの肌』・・・第二十六章

     『あやかしの肌』
第二十六章
ネット小説ランキング>【R18官能部門】>あやかしの肌

再び美千代の部屋。
底意地が悪そうな目で、美千代は辰二を見つめていた。

「呆れたねえ。私の悪口を吹き込まれて銭湯を辞めてきたってのかい? 子供じゃあるまいし、すぐに謝ってきなさいよ」

「・・それはできない」

辰二は美千代から目を反らしてポツリと呟いた。
盛吉を恨んでいるわけではない。

裸弁天であっても母は母なのだ。
微かに残っている母の感触が美千代の肌だった。
幼い頃に別れた母への思慕は、美千代の肌でしか満たすことができないのだ。

離れられない。
おそらく父も同じ思いだったのだろう。

この世には、世間から嘲られても手放せない宝物がある。
財産を失っても、生活の糧に困っても、この肌だけは永遠に守らなければならない。
美千代がふんと鼻を鳴らした。

「それならすぐに職探しに行きな。あたしを養う甲斐性がないなら、今すぐこの部屋から出て行ってもらうからね」

「・・・・」

「いいかい、あたしはちょっと銀座へ買い物に行ってくるからね」

そう吐き捨てると、美千代は裸のまま鏡台に向って念入りに化粧を始めた。
美千代は次の金蔓を探しているようだ。
最近よく店に顔を見せる土建屋の社長と、これから連れ込み宿で逢引するに違いない。
つづく・・・
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『あやかしの肌』・・・最終章

     『あやかしの肌』
最終章
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水商売の鉄則とは言え、一文無しの辰二に愛想を尽かした美千代は、金回りのいい常務にあっさりと乗り換えるつもりなのだろう。

別に美千代が浮気しても構わない。
女心など端から誰も信じていない。
田舎のしがらみに縛られて死んだ父も、きっとそう叫びたかったに違いない。

そう、美千代と別れてもいい。
美千代の肌さえあればいいのだ。
口喧しく金ばかりせがむ美千代など、誰かに譲ってやった方が好都合である。

辰二は美千代の背中へ目を遣った。
白い肌にぽつんと小さな染みがあった。
美千代の不摂生が原因なのか、この半年で肌の張りもわずかに緩み、ひしひしと老いが肌に体に忍び寄っていた。

かっと怒りがこみ上げてきた。
このまま淫蕩な美千代に任せておいたら、この美肌を醜悪に腐らせてしまうだろう。

母の形見。父の妄執。
いつまでも変わらぬ母の肌を撫で、その柔らかい懐に抱かれて赤子のように眠りたい。

(永遠に・・この手許に・・)

父の失敗を繰り返すのは愚かだ。
ならば一刻の猶予もない。
今すぐ爛れた美千代から肌を切り離してしまおう。

(・・剥製か)

ガラス製の灰皿を手にした辰二は、化粧する美千代の後姿へそっと近づいた。
 ー閉幕ー
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紅殻格子は、別名で雑誌等に官能小説を発表する作家です。

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日本動物児童文学賞・環境大臣賞を受賞。
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