『独りぼっちの部屋』 ・・・第二十章
『独りぼっちの部屋』
第二十章
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足元がもつれた二人は、そのままがらんとした部屋の畳に転がった。
「く、悔しい!」
小枝子の平手が隆正の頬に飛んだ。
「あ、あれは隣に住む大学生の愛人だよ・・痛っ、小枝子、落ち着きなさい!」
隆正は暴れる小枝子を畳の上に組み敷き、そのまま悋気が収まるのを待った。
勘違いとは言え、小枝子が嫉妬するのは意外だった。
信じられない力で小枝子はもがき続けたが、はっと我に返ると、憑き物が落ちたようにポカンと部屋を見回した。
「・・こ、ここは、どこなの?」
隆正はひりひりする頬を押さえながら、窓を少し開けて黴臭い空気を換気した。
「・・僕が借りている部屋だよ」
「借りているって・・ど、どうして?」
「・・この部屋に来ると心が安らぐんだ」
「嘘よ、こんな汚いアパートで・・やっぱり女がいるんでしょう。女と暮らすためにこの部屋を借りているんだわ!」
小枝子は再び嫉妬に駆られて暴れようとした。
仕方なく隆正は、小枝子の頬を軽く平手で叩いた。
「話を聞きなさい」
小枝子は頬を押さえて、円らな瞳を大きく見開いた。
もう逃げられないと隆正は覚悟した。
畳の上に胡坐をかいて座ると、呆然と畳の上に崩れた小枝子に、ぽつりぽつりと経緯を話し始めた。
「僕が生まれ育ったのはこんな部屋だった。狭い六畳間に家族四人で暮らしていた・・」
初めて隆正は少年時代を小枝子に語った。
セレブの小枝子には、かつて口にするのも憚られる貧しい生活だった。
だがそんなコンプレックスも、母が女として幸せだとわかった今、どこか懐かしい思い出に昇華しつつあった。
「そ、そんな・・」
「小枝子を責めているわけじゃない。だがこれはどうにもならない現実なんだ」
「・・・・」
「この部屋が本当の僕の姿なんだよ」
言葉を振り絞った隆正は、放心して動かない小枝子を見つめた。
目尻に湛えた小枝子の涙が、零れんばかりに大きく膨らんでいく。
つづく…
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「く、悔しい!」
小枝子の平手が隆正の頬に飛んだ。
「あ、あれは隣に住む大学生の愛人だよ・・痛っ、小枝子、落ち着きなさい!」
隆正は暴れる小枝子を畳の上に組み敷き、そのまま悋気が収まるのを待った。
勘違いとは言え、小枝子が嫉妬するのは意外だった。
信じられない力で小枝子はもがき続けたが、はっと我に返ると、憑き物が落ちたようにポカンと部屋を見回した。
「・・こ、ここは、どこなの?」
隆正はひりひりする頬を押さえながら、窓を少し開けて黴臭い空気を換気した。
「・・僕が借りている部屋だよ」
「借りているって・・ど、どうして?」
「・・この部屋に来ると心が安らぐんだ」
「嘘よ、こんな汚いアパートで・・やっぱり女がいるんでしょう。女と暮らすためにこの部屋を借りているんだわ!」
小枝子は再び嫉妬に駆られて暴れようとした。
仕方なく隆正は、小枝子の頬を軽く平手で叩いた。
「話を聞きなさい」
小枝子は頬を押さえて、円らな瞳を大きく見開いた。
もう逃げられないと隆正は覚悟した。
畳の上に胡坐をかいて座ると、呆然と畳の上に崩れた小枝子に、ぽつりぽつりと経緯を話し始めた。
「僕が生まれ育ったのはこんな部屋だった。狭い六畳間に家族四人で暮らしていた・・」
初めて隆正は少年時代を小枝子に語った。
セレブの小枝子には、かつて口にするのも憚られる貧しい生活だった。
だがそんなコンプレックスも、母が女として幸せだとわかった今、どこか懐かしい思い出に昇華しつつあった。
「そ、そんな・・」
「小枝子を責めているわけじゃない。だがこれはどうにもならない現実なんだ」
「・・・・」
「この部屋が本当の僕の姿なんだよ」
言葉を振り絞った隆正は、放心して動かない小枝子を見つめた。
目尻に湛えた小枝子の涙が、零れんばかりに大きく膨らんでいく。
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