『独りぼっちの部屋』 ・・・第十九章
『独りぼっちの部屋』
第十九章
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隆正は心の中で苦笑した。
(母もこんな笑顔を見せたのだろうか?)
貧しい暮らしに追われ、ろくに化粧をすることもなく、母は呑んだくれの夫に仕えてきた。
あのバンドマンが住んでいた隣の部屋こそ、母が女でいることができる唯一の居場所だったのかもしれない。
すでに当時の母より年を経た隆正は、逆にそうであって欲しいと祈る気持ちになっていた。
ふと小枝子の顔が脳裏を過ぎった。
翻って隆正は、女の笑みを与えらない父と変わらなかった。
隣の大学生以下かもしれない。
自分の至らなさで、女を失った小枝子が不憫でならなかった。
人妻は古いアパートの外階段を上がると、201号室の前で隆正に頭を下げた。
「有難うございました」
「いえ、本当のことを言っただけです。今日も激しい情事を期待していますよ」
「い、いやだわ・・」
嬉しそうに人妻が科をつくった時、けたたましく階段を上がってくる音がした。
小枝子だった。
「あ、あなた!」
その激しい剣幕に隆正は後退りした。
驚いた人妻は、慌てて隣室に逃げ込んでしまった。
「ど、どうして・・?」
「浮気していたのね? こんなところで私に隠れて浮気していたのね!」
血相を変えた小枝子は、悲鳴にも似た大声を張り上げて隆正に詰め寄ってきた。
「ち、違う・・落ち着いて・・」
普段の令嬢然とした小枝子ではなかった。
まるで闘牛のように、目を血走らせて小枝子は突進してきた。
間一髪、隆正は小枝子を抱き受けると、急いで鍵を開け、201号室にもろとも雪崩れ込んだ。
つづく…
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(母もこんな笑顔を見せたのだろうか?)
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あのバンドマンが住んでいた隣の部屋こそ、母が女でいることができる唯一の居場所だったのかもしれない。
すでに当時の母より年を経た隆正は、逆にそうであって欲しいと祈る気持ちになっていた。
ふと小枝子の顔が脳裏を過ぎった。
翻って隆正は、女の笑みを与えらない父と変わらなかった。
隣の大学生以下かもしれない。
自分の至らなさで、女を失った小枝子が不憫でならなかった。
人妻は古いアパートの外階段を上がると、201号室の前で隆正に頭を下げた。
「有難うございました」
「いえ、本当のことを言っただけです。今日も激しい情事を期待していますよ」
「い、いやだわ・・」
嬉しそうに人妻が科をつくった時、けたたましく階段を上がってくる音がした。
小枝子だった。
「あ、あなた!」
その激しい剣幕に隆正は後退りした。
驚いた人妻は、慌てて隣室に逃げ込んでしまった。
「ど、どうして・・?」
「浮気していたのね? こんなところで私に隠れて浮気していたのね!」
血相を変えた小枝子は、悲鳴にも似た大声を張り上げて隆正に詰め寄ってきた。
「ち、違う・・落ち着いて・・」
普段の令嬢然とした小枝子ではなかった。
まるで闘牛のように、目を血走らせて小枝子は突進してきた。
間一髪、隆正は小枝子を抱き受けると、急いで鍵を開け、201号室にもろとも雪崩れ込んだ。
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