『独りぼっちの部屋』 ・・・第十八章
『独りぼっちの部屋』
第十八章
アパートへ向かって、人妻は隆正と並んで歩き始めた。
「教えて欲しいことがあるんです」
「え、私にですか?」
「はい、あの・・わ、私達のこと・・いつも壁越しに聞いていらっしゃるんでしょう?」
人妻はぽっと顔を赤らめて上目遣いに隆正を見つめた。
「あ、いや・・その・・」
「それは構わないんです。壁が薄いから筒抜けだって・・ユウ君もそれを承知で私を抱いているんですから・・」
「・・は、はあ」
「だから逆によくご存知だと思うんです。私以外にも、ユウ君は女性を部屋へ連れ込んだりしているんですか?」
人妻は真摯な瞳を隆正へ向けた。
まるで女子中学生かと見紛うほど、地味な中年の人妻は恋する女の顔になっていた。
隆正は胸を高鳴らせた。
隣室の大学生にとっては、ただの遊び相手に過ぎない家庭教師先の母親だ。
むろんこの人妻にしても、最初はちょっとした火遊びのつもりだったに違いない。
だが肌を合わせていくたびに、嫉妬すら覚えるほど人妻は恋心を抱いている。
(これが女か・・)
とうの昔に女を卒業したはずの人妻が、再び恋という命を与えられて眩しく輝いている。
きっとあの日の母も、バンドマンの素行にやきもきしていたのかもしれない。
不安そうな顔をした人妻のために、隆正はきっぱりと嘘を言い切った。
「そんなことはありませんよ」
「本当ですか?」
「ええ、奥さんが来る日以外は、女性の声など一切聞いたことがありません」
「そ、そうですか」
差している赤い傘のように、人妻の表情がぱっと明るく綻んだ。
目尻の小皺は多いが、それがかえって女の幸福感を滲ませている。
つづく…
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「教えて欲しいことがあるんです」
「え、私にですか?」
「はい、あの・・わ、私達のこと・・いつも壁越しに聞いていらっしゃるんでしょう?」
人妻はぽっと顔を赤らめて上目遣いに隆正を見つめた。
「あ、いや・・その・・」
「それは構わないんです。壁が薄いから筒抜けだって・・ユウ君もそれを承知で私を抱いているんですから・・」
「・・は、はあ」
「だから逆によくご存知だと思うんです。私以外にも、ユウ君は女性を部屋へ連れ込んだりしているんですか?」
人妻は真摯な瞳を隆正へ向けた。
まるで女子中学生かと見紛うほど、地味な中年の人妻は恋する女の顔になっていた。
隆正は胸を高鳴らせた。
隣室の大学生にとっては、ただの遊び相手に過ぎない家庭教師先の母親だ。
むろんこの人妻にしても、最初はちょっとした火遊びのつもりだったに違いない。
だが肌を合わせていくたびに、嫉妬すら覚えるほど人妻は恋心を抱いている。
(これが女か・・)
とうの昔に女を卒業したはずの人妻が、再び恋という命を与えられて眩しく輝いている。
きっとあの日の母も、バンドマンの素行にやきもきしていたのかもしれない。
不安そうな顔をした人妻のために、隆正はきっぱりと嘘を言い切った。
「そんなことはありませんよ」
「本当ですか?」
「ええ、奥さんが来る日以外は、女性の声など一切聞いたことがありません」
「そ、そうですか」
差している赤い傘のように、人妻の表情がぱっと明るく綻んだ。
目尻の小皺は多いが、それがかえって女の幸福感を滲ませている。
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