『独りぼっちの部屋』 ・・・第十三章
『独りぼっちの部屋』
第十三章
そこはがらんとした六畳間だった。
ぽつんとテレビが置かれている以外、家財道具は何一つなかった。
日焼けして毛羽立った畳、煙草のヤニで茶色くなった壁紙、そして埃を被った蛍光灯の笠が、古びた部屋をいっそううらぶれさせている。
木枠でできた窓の外には、錆びついた鉄の手すりがあり、前の住人が残した丸い物干しハンガーが風に揺れていた。
部屋に入ると、ここ数日締め切っていたせいか、澱んだ黴臭い空気が鼻をついた。
(ああ、落ち着くなあ・・)
窓を開け放って初夏の風を入れると、隆正は六畳間の真ん中で大の字に寝転んだ。
そしてべこべこに歪んだ天井板を見上げて、ほっと安堵のため息を吐いた。
この部屋は、小枝子に内緒で借りている隠れ家だった。
一ヶ月前、帰宅拒否症気味だった隆正は、吐き気がして一つ手前の駅で電車を下りた。
帰らなければと焦れば焦るほど、足は古河家から遠ざかって行く。
ふらふらと商店街まで辿り着いた隆正は、このアパートに居住者募集の張り紙が貼ってあるのを見つけた。
密かに隆正は部屋を借りる契約を不動産屋と結んだ。
家賃は小遣いで賄えた。
近くの電器屋でテレビを買い、単身赴任者を装ってアパートに紛れ込んだ。
古河家から近いため、隆正は小枝子にばれないよう細心の注意を払った。
接待と偽って会社の帰りに立ち寄ったり、今日のように休日出勤と偽って訪れたりした。
ところがこの部屋へ来ても、隆正は特に何かをするわけではなかった。
テレビを見たり、雑誌を読んだり、昼寝をしたり、そんな無為な時間を過ごすことで、隆正は古河家で暮らすストレスを癒していた。
つづく…
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ぽつんとテレビが置かれている以外、家財道具は何一つなかった。
日焼けして毛羽立った畳、煙草のヤニで茶色くなった壁紙、そして埃を被った蛍光灯の笠が、古びた部屋をいっそううらぶれさせている。
木枠でできた窓の外には、錆びついた鉄の手すりがあり、前の住人が残した丸い物干しハンガーが風に揺れていた。
部屋に入ると、ここ数日締め切っていたせいか、澱んだ黴臭い空気が鼻をついた。
(ああ、落ち着くなあ・・)
窓を開け放って初夏の風を入れると、隆正は六畳間の真ん中で大の字に寝転んだ。
そしてべこべこに歪んだ天井板を見上げて、ほっと安堵のため息を吐いた。
この部屋は、小枝子に内緒で借りている隠れ家だった。
一ヶ月前、帰宅拒否症気味だった隆正は、吐き気がして一つ手前の駅で電車を下りた。
帰らなければと焦れば焦るほど、足は古河家から遠ざかって行く。
ふらふらと商店街まで辿り着いた隆正は、このアパートに居住者募集の張り紙が貼ってあるのを見つけた。
密かに隆正は部屋を借りる契約を不動産屋と結んだ。
家賃は小遣いで賄えた。
近くの電器屋でテレビを買い、単身赴任者を装ってアパートに紛れ込んだ。
古河家から近いため、隆正は小枝子にばれないよう細心の注意を払った。
接待と偽って会社の帰りに立ち寄ったり、今日のように休日出勤と偽って訪れたりした。
ところがこの部屋へ来ても、隆正は特に何かをするわけではなかった。
テレビを見たり、雑誌を読んだり、昼寝をしたり、そんな無為な時間を過ごすことで、隆正は古河家で暮らすストレスを癒していた。
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