『独りぼっちの部屋』…第九章
『独りぼっちの部屋』
第九章
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だが障害は家柄だけではなかった。
つきあい始めた頃、好みのタイプを聞かれた隆正は、迷わず淫らな女は嫌いだと小枝子に答えた。
貧しさへの劣等感とともに、隆正は性に潜む魔物に怯えていたからだった。
(淫らな母・・)
あの日の母がトラウマになっていた。
以来、隆正は女性の貞操に疑念を抱き続けてきた。
聖母のような母でさえ、淫らな悪魔の肉欲に狂わされてしまうのだ。
幸いにも小枝子は性に淡白だった。
不感症ではないが、積極的に性を貪る淫らさはなかった。
男性経験は年相応にあるようだが、求められれば応じる程度の性に未熟な女だった。
順風満帆な結婚生活のはずだった。
だが現実には埋められぬ溝が横たわっていた。
改めて隆正はダイニングを見渡した。
西洋館の中には、有名な画家の絵画がさり気なく廊下に掛けられ、途方もない値打ちのアンティーク家具が雑然と置かれている。
生まれ育った横浜のアパートとは別世界だった。
暮らし始めた早々は、身のほど知らずの眩しい世界に心舞い上がることも多かった。
ところがしばらくすると、この立派な豪邸が針の筵のように居心地が悪くなった。
むろん義父母との同居、婿養子と言うしがらみもあるが、この家は隆正にとって馴染むことはできない異界だった。
人も羨むセレブな暮らしも、肩身ばかりが狭くて安らぎを見つけ出せなかった。
ナイフとフォークの使い方から始まり、パーティーでの行儀作法と社交術、隆正には途惑うことばかりだった。
四十代半ばに至った今も恥をかくことが多く、片時も緊張から解放されることなどなかった。
つづく…
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貧しさへの劣等感とともに、隆正は性に潜む魔物に怯えていたからだった。
(淫らな母・・)
あの日の母がトラウマになっていた。
以来、隆正は女性の貞操に疑念を抱き続けてきた。
聖母のような母でさえ、淫らな悪魔の肉欲に狂わされてしまうのだ。
幸いにも小枝子は性に淡白だった。
不感症ではないが、積極的に性を貪る淫らさはなかった。
男性経験は年相応にあるようだが、求められれば応じる程度の性に未熟な女だった。
順風満帆な結婚生活のはずだった。
だが現実には埋められぬ溝が横たわっていた。
改めて隆正はダイニングを見渡した。
西洋館の中には、有名な画家の絵画がさり気なく廊下に掛けられ、途方もない値打ちのアンティーク家具が雑然と置かれている。
生まれ育った横浜のアパートとは別世界だった。
暮らし始めた早々は、身のほど知らずの眩しい世界に心舞い上がることも多かった。
ところがしばらくすると、この立派な豪邸が針の筵のように居心地が悪くなった。
むろん義父母との同居、婿養子と言うしがらみもあるが、この家は隆正にとって馴染むことはできない異界だった。
人も羨むセレブな暮らしも、肩身ばかりが狭くて安らぎを見つけ出せなかった。
ナイフとフォークの使い方から始まり、パーティーでの行儀作法と社交術、隆正には途惑うことばかりだった。
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