『独りぼっちの部屋』 …第六章
『独りぼっちの部屋』
第六章
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青々と目映い芝生の上を爽やかな薫風がそよいでいく。
アンティークな赤レンガをふんだんに使った庭園では、色とりどりの薔薇が艶やかな大輪を競い合う。
そして花々に傅かれるように、ギリシャ神話の女神を象った彫像が、三百坪近くある庭園の中央で白い裸身を晒している。
古河隆正は、テラスでぼんやりと春の陽射しを浴びていた。
(まるで天界の城だ)
背後の住居は、明治時代に造られた西洋館を模している。
円柱の尖塔を配したアメリカン・ビクトリア様式の建物は、重厚且つ瀟洒に、西洋庭園とのハーモニーを奏でていた。
ここ東京の高台にあるお屋敷町に、四十五歳の隆正は邸宅を構えていた。
と言うと、若き実業家かと勘違いしそうだが、正確には隆正がこの豪邸に住みついたに過ぎない。
隆正は古河家の婿養子だった。
古河家は傍流だが、遡れば明治の男爵家に辿り着く家柄である。
戦後没落する貴族を尻目に、今も都内に広大な土地を所有し、十数棟の賃貸ビルやマンションを経営していた。
妻が背後で呼んだ。
「あなた、昼食ができましたよ」
この家の一人娘で、隆正が婿入りしてからもう七年が経つ。
古河小枝子。
肩まで伸びた栗色の髪がゆるくウエーブを描き、縁なしのメガネフレームから覗く涼やかな瞳が知性的に見える。高い鼻梁と薄い口唇が、上品な卵形の小顔に調和している。
三十路半ばを過ぎた今も、小枝子は男爵家のプリンセスに相応しい気品を保っていた。
隆正はテラスから邸内に入ると、小枝子の後についてダイニングへ向かった。
すでにダイニングでは、義父母が姿勢を正してテーブルについていた。
「さあ、頂きましょう」
今日のランチには、出張料理人が作ったフランス料理が並んでいる。
厳かなナイフとフォークの音が、広々としたダイニングに響き始めた。
つづく…
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アンティークな赤レンガをふんだんに使った庭園では、色とりどりの薔薇が艶やかな大輪を競い合う。
そして花々に傅かれるように、ギリシャ神話の女神を象った彫像が、三百坪近くある庭園の中央で白い裸身を晒している。
古河隆正は、テラスでぼんやりと春の陽射しを浴びていた。
(まるで天界の城だ)
背後の住居は、明治時代に造られた西洋館を模している。
円柱の尖塔を配したアメリカン・ビクトリア様式の建物は、重厚且つ瀟洒に、西洋庭園とのハーモニーを奏でていた。
ここ東京の高台にあるお屋敷町に、四十五歳の隆正は邸宅を構えていた。
と言うと、若き実業家かと勘違いしそうだが、正確には隆正がこの豪邸に住みついたに過ぎない。
隆正は古河家の婿養子だった。
古河家は傍流だが、遡れば明治の男爵家に辿り着く家柄である。
戦後没落する貴族を尻目に、今も都内に広大な土地を所有し、十数棟の賃貸ビルやマンションを経営していた。
妻が背後で呼んだ。
「あなた、昼食ができましたよ」
この家の一人娘で、隆正が婿入りしてからもう七年が経つ。
古河小枝子。
肩まで伸びた栗色の髪がゆるくウエーブを描き、縁なしのメガネフレームから覗く涼やかな瞳が知性的に見える。高い鼻梁と薄い口唇が、上品な卵形の小顔に調和している。
三十路半ばを過ぎた今も、小枝子は男爵家のプリンセスに相応しい気品を保っていた。
隆正はテラスから邸内に入ると、小枝子の後についてダイニングへ向かった。
すでにダイニングでは、義父母が姿勢を正してテーブルについていた。
「さあ、頂きましょう」
今日のランチには、出張料理人が作ったフランス料理が並んでいる。
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