『独りぼっちの部屋』 …第三章
『独りぼっちの部屋』
第三章
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女が切なそうに喘いだ。
「ああん、悪い子ね・・いやん、もう子供が学校から帰って来ちゃうから・・」
途切れ途切れに洩れてくる女の声に、少年は紛うことなく聞き覚えがあった。
母の声だった。
心臓が止まりそうになった。
下町育ちの早熟な少年は、コウノトリなど端から信じていない。
夫を持つ女が別の男と淫らな行為に耽るのは、不貞という罪悪であることも知っていた。
美しく、優しく、聡明で、働き者の母。
その憧れの聖母が、薄い壁一枚隔てた隣室で、男と女の艶かしい睦言を交わしている。
しかもあろうことか、甘えている相手は、一回り以上も年が離れたチンピラ男なのだ。
少年は俄かに信じられなかった。
母が正気とは思えなかった。
いくら父が悪くても、人の道を踏み外すような母であるはずがない。
(あ、悪魔にとり憑かれている・・)
狂った母を垣間見た少年は、ぞっと全身を粟立たせた。
恐怖のあまり、アパートから逃げ出したい衝動に駆られた。
だが少年の足は動かなかった。
西に向いた窓から射し込む夕日が、毒々しいまでに部屋を茜色に染めている。
住み慣れた部屋が、紅蓮の炎に包まれているようだった。
その幻想的な異界が、少年の抑え切れない好奇心を煽り立てた。
母に憑依した悪魔に、少年自身も魅入られていたのだ。
つづく…
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途切れ途切れに洩れてくる女の声に、少年は紛うことなく聞き覚えがあった。
母の声だった。
心臓が止まりそうになった。
下町育ちの早熟な少年は、コウノトリなど端から信じていない。
夫を持つ女が別の男と淫らな行為に耽るのは、不貞という罪悪であることも知っていた。
美しく、優しく、聡明で、働き者の母。
その憧れの聖母が、薄い壁一枚隔てた隣室で、男と女の艶かしい睦言を交わしている。
しかもあろうことか、甘えている相手は、一回り以上も年が離れたチンピラ男なのだ。
少年は俄かに信じられなかった。
母が正気とは思えなかった。
いくら父が悪くても、人の道を踏み外すような母であるはずがない。
(あ、悪魔にとり憑かれている・・)
狂った母を垣間見た少年は、ぞっと全身を粟立たせた。
恐怖のあまり、アパートから逃げ出したい衝動に駆られた。
だが少年の足は動かなかった。
西に向いた窓から射し込む夕日が、毒々しいまでに部屋を茜色に染めている。
住み慣れた部屋が、紅蓮の炎に包まれているようだった。
その幻想的な異界が、少年の抑え切れない好奇心を煽り立てた。
母に憑依した悪魔に、少年自身も魅入られていたのだ。
つづく…
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