『独りぼっちの部屋』 …第二章
『独りぼっちの部屋』
第二章
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ここが少年達家族四人の住まいだった。
小学五年生の少年には、父母と中学生になる兄がいる。
勉強机など置く場所はなく、夜になれば、卓袱台を片づけて雑魚寝しなければならなかった。
父は、港の小さな倉庫で働く労働者で、競馬とパチンコが唯一の楽しみだった。
まだ四十代半ばだがアル中気味で、気に入らないことがあると母に暴力をふるった。
生活にだらしなく、酒の力を借りなければ何もできない男だった。
そんな父に、母は口答え一つせず仕えていた。
父に平手打ちされて、トイレで嗚咽を忍ばせる母を少年は何度も見た。
何故母が父と結婚したのか、子供心に不思議でならなかった。
今年四十歳になる母は、友達から羨ましがられるほど若く美しい。
藤の花のようにたおやかな容姿だが、近所でも評判の働き者だった。
昼は少年雑誌の付録をつくる内職の仕事、夜は足踏みミシンの音を子守唄にしてくれた。
貧しいアパート暮らしだったが、少年にとって母は大切な自慢の宝物だった。
だが母はどこにもいなかった。
いつもなら共同の炊事場に立って、忙しく夕飯の支度をしている時間だった。
まだ商店街で買い物をしているのだろうか、それとも仕立物を届けに行っているのだろうか。
少年がテレビを点けようとした時、隣室との壁から微かな話し声が洩れてきた。
男と女の声だった。
「・・ん、もう許して・・ダメよ・・」
鼻にかかった甘え声で女が拒んでいる。
「・・いいじゃないか・・もう一回・・まだ旦那は帰って来ないんだろう・・」
せがむ男の声は隣室のバンドマンだった。
まだ二十代半ばぐらいだろうか、男はいつも派手でチンピラのような服を着ていた。
兄の話では、売れないバンドのドラマーで、クラブやキャバレーで演奏しているらしい。
昼間はパチンコ屋に入り浸り、夜になると横浜の繁華街へ仕事に出かけて行く。
つづく…
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父は、港の小さな倉庫で働く労働者で、競馬とパチンコが唯一の楽しみだった。
まだ四十代半ばだがアル中気味で、気に入らないことがあると母に暴力をふるった。
生活にだらしなく、酒の力を借りなければ何もできない男だった。
そんな父に、母は口答え一つせず仕えていた。
父に平手打ちされて、トイレで嗚咽を忍ばせる母を少年は何度も見た。
何故母が父と結婚したのか、子供心に不思議でならなかった。
今年四十歳になる母は、友達から羨ましがられるほど若く美しい。
藤の花のようにたおやかな容姿だが、近所でも評判の働き者だった。
昼は少年雑誌の付録をつくる内職の仕事、夜は足踏みミシンの音を子守唄にしてくれた。
貧しいアパート暮らしだったが、少年にとって母は大切な自慢の宝物だった。
だが母はどこにもいなかった。
いつもなら共同の炊事場に立って、忙しく夕飯の支度をしている時間だった。
まだ商店街で買い物をしているのだろうか、それとも仕立物を届けに行っているのだろうか。
少年がテレビを点けようとした時、隣室との壁から微かな話し声が洩れてきた。
男と女の声だった。
「・・ん、もう許して・・ダメよ・・」
鼻にかかった甘え声で女が拒んでいる。
「・・いいじゃないか・・もう一回・・まだ旦那は帰って来ないんだろう・・」
せがむ男の声は隣室のバンドマンだった。
まだ二十代半ばぐらいだろうか、男はいつも派手でチンピラのような服を着ていた。
兄の話では、売れないバンドのドラマーで、クラブやキャバレーで演奏しているらしい。
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