『色褪せぬ薔薇』・・・第九章
『色褪せぬ薔薇』
第九章
その言葉通り、秀明の風邪が治っても、葉子はアパートを訪れるようになった。
退社時間が早い葉子は、残業の秀明が戻ってくる前に、掃除と洗濯、そして夕食の用意を済ませて帰るのだった。
だが卓袱台の上には、まるで葉子が一緒にいるかのように、真紅の薔薇が一輪挿しに活けてあった。
葉子の気持ちは嬉しかった。
だがそれが一週間も続くと、さすがに秀明も放ってはおけなくなった。
ある日、外回りの仕事を早目に切り上げると、秀明は会社へ戻らずアパートへ直帰した。
鍵は開いていた。
秀明は恐る恐る玄関のドアを開けた。
「あら、お帰りなさい。今日は早かったんですね」
まるで新妻のように、葉子はエプロン姿で秀明を迎えた。
六畳間の卓袱台には、いつものように葉子の手料理が用意されている。
「寒かったでしょう。今、お風呂を沸かしますから・・」
葉子ははにかみながらコートを脱がせた。
狭い部屋を甲斐甲斐しく立ち振る舞う葉子は、秀明の世話をするのが心から楽しそうに見えた。
秀明は卓袱台に胡坐をかくと、葉子を前に座らせて心を鬼にして言った。
「今日早く帰ってきたのは、はっきりさせておかなければならないことがあるからだ」
「・・・・」
「君は結婚したばかりでご主人がいる。僕を気遣ってくれるのは嬉しいが、これ以上は君のためにならない」
厳しい口調で切り出した秀明は、やや俯き加減に正座する葉子へ目を遣った。
つづく…
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だが卓袱台の上には、まるで葉子が一緒にいるかのように、真紅の薔薇が一輪挿しに活けてあった。
葉子の気持ちは嬉しかった。
だがそれが一週間も続くと、さすがに秀明も放ってはおけなくなった。
ある日、外回りの仕事を早目に切り上げると、秀明は会社へ戻らずアパートへ直帰した。
鍵は開いていた。
秀明は恐る恐る玄関のドアを開けた。
「あら、お帰りなさい。今日は早かったんですね」
まるで新妻のように、葉子はエプロン姿で秀明を迎えた。
六畳間の卓袱台には、いつものように葉子の手料理が用意されている。
「寒かったでしょう。今、お風呂を沸かしますから・・」
葉子ははにかみながらコートを脱がせた。
狭い部屋を甲斐甲斐しく立ち振る舞う葉子は、秀明の世話をするのが心から楽しそうに見えた。
秀明は卓袱台に胡坐をかくと、葉子を前に座らせて心を鬼にして言った。
「今日早く帰ってきたのは、はっきりさせておかなければならないことがあるからだ」
「・・・・」
「君は結婚したばかりでご主人がいる。僕を気遣ってくれるのは嬉しいが、これ以上は君のためにならない」
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