『色褪せぬ薔薇』・・・第十章
『色褪せぬ薔薇』
第十章
北国の女らしく、葉子は色白で端正な顔立ちをした美人だった。
ウエーブのかかった髪が肩の上で小さく震えている。
長い睫毛を伏せた葉子は、愛らしい薄桃色の口唇をキュッと噛み締めた。
そして鳶色の虹彩を見開いてすくっと立ち上がった。
その瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。
「私、主人と別れようと思っているんです」
「ど、どうして・・辛いことでもあるのか?」
「いいえ、主人は優しい人です・・いけないのは私・・」
三十路を前にして、葉子は婚期を逃すことを恐れた。
体調が思わしくない両親の喜ぶ顔も見たかった。
そんな後ろ向きの理由で、葉子は地方公務員の夫と見合いをしたのだ。
結婚生活は針の筵だった。
当然ながら夫は、葉子が専業主婦になり、早く子供を産んでくれることを望んだ。
だが葉子は夫を愛する自信がなかった。
このまま夫に扶養される安定した生活に、葉子は生きることの張り合いを見出せずにいた。
「いい加減な気持ちで結婚したことを、夫には申し訳ないと思っています」
「しかし・・夫婦なんてそんなものじゃないのか?」
秀明は自分を顧みて、夫婦など所詮他人だと達観していた。
恋愛結婚をしても、愛と言う錯覚で一緒になっただけで、それがいつまでも続くわけもない。
葉子は首を振った。
「吉川課長がひたむきに仕事をしている姿を見て、私も悔いのない人生を送りたいって思ったんです・・」
そして葉子は一輪挿しの薔薇へ目を遣った。
「私、自分の夢を叶えたい。フラワーアレンジメント。お金を貯めてお店を持ちたい・・嘘偽りのない人生を全うしたい・・仕事も・・こ・・こ、恋も・・」
つづく…
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ウエーブのかかった髪が肩の上で小さく震えている。
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そして鳶色の虹彩を見開いてすくっと立ち上がった。
その瞳にはうっすらと涙が滲んでいた。
「私、主人と別れようと思っているんです」
「ど、どうして・・辛いことでもあるのか?」
「いいえ、主人は優しい人です・・いけないのは私・・」
三十路を前にして、葉子は婚期を逃すことを恐れた。
体調が思わしくない両親の喜ぶ顔も見たかった。
そんな後ろ向きの理由で、葉子は地方公務員の夫と見合いをしたのだ。
結婚生活は針の筵だった。
当然ながら夫は、葉子が専業主婦になり、早く子供を産んでくれることを望んだ。
だが葉子は夫を愛する自信がなかった。
このまま夫に扶養される安定した生活に、葉子は生きることの張り合いを見出せずにいた。
「いい加減な気持ちで結婚したことを、夫には申し訳ないと思っています」
「しかし・・夫婦なんてそんなものじゃないのか?」
秀明は自分を顧みて、夫婦など所詮他人だと達観していた。
恋愛結婚をしても、愛と言う錯覚で一緒になっただけで、それがいつまでも続くわけもない。
葉子は首を振った。
「吉川課長がひたむきに仕事をしている姿を見て、私も悔いのない人生を送りたいって思ったんです・・」
そして葉子は一輪挿しの薔薇へ目を遣った。
「私、自分の夢を叶えたい。フラワーアレンジメント。お金を貯めてお店を持ちたい・・嘘偽りのない人生を全うしたい・・仕事も・・こ・・こ、恋も・・」
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