『色褪せぬ薔薇』・・・第六章
『色褪せぬ薔薇』
第六章
二十五年前。
三十四歳になった秀明は、課長職に昇格するとともに、関東支社から東北支社へと転勤を命じられた。
東北支社のある仙台は、縁も所縁もない土地だったが、秀明は意欲満々で辞令を受けた。
管理職として営業チームを率いるのは初めてだったし、秀明自身、仕事が面白くて仕方ない年齢を迎えていた。
ところが妻は仙台への引っ越しを拒んだ。
結婚が早かった秀明には、すでに小学校低学年になる息子がいた。
それを理由に妻は単身赴任を勧めた。
だが妻の真意は、自分の実家がある横浜を離れたくなかったのだった。
渋々秀明は一人で仙台へ乗り込んだ。
仙台での仕事は順調だった。
秀明は部下の先頭に立って仕事に専心した。
すると秀明の熱意が浸透したのか、低迷していたチームの業績は急上昇した。
そしてチームリーダーである秀明の名前も、一躍全国区で知れ渡った。
だが反面、一人暮らしの経験がない秀明にとって、見知らぬ土地での単身赴任生活は悲惨を極めた。
家事を全て妻に任せ切りだった秀明は、料理の作り方はおろか、洗濯機の使い方もわからない有様だった。
また仕事から戻れば、疲れ果てて掃除をする気にもなれなかった。
一ヶ月も経つと、アパートの六畳間は夢の島と化した。
万年床の周りには、ビールの空き缶や乾き物の空き袋が散乱し、部屋の隅には、洗っていない洗濯物が小山を築いた。
捨て忘れた生ゴミと黒カビが蔓延る浴槽からは、鼻を摘みたくなる異臭が立ちこめた。
一人暮らしで酒量も増えた。
得意先の接待や、部下を飲みに連れて行くことも多かったが、自炊ができないため、夜は近くの小料理屋に通って飯を食った。
行けばついつい酒を飲む。
気がつくと、毎日深酒する生活が習慣になっていた。
つづく…
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管理職として営業チームを率いるのは初めてだったし、秀明自身、仕事が面白くて仕方ない年齢を迎えていた。
ところが妻は仙台への引っ越しを拒んだ。
結婚が早かった秀明には、すでに小学校低学年になる息子がいた。
それを理由に妻は単身赴任を勧めた。
だが妻の真意は、自分の実家がある横浜を離れたくなかったのだった。
渋々秀明は一人で仙台へ乗り込んだ。
仙台での仕事は順調だった。
秀明は部下の先頭に立って仕事に専心した。
すると秀明の熱意が浸透したのか、低迷していたチームの業績は急上昇した。
そしてチームリーダーである秀明の名前も、一躍全国区で知れ渡った。
だが反面、一人暮らしの経験がない秀明にとって、見知らぬ土地での単身赴任生活は悲惨を極めた。
家事を全て妻に任せ切りだった秀明は、料理の作り方はおろか、洗濯機の使い方もわからない有様だった。
また仕事から戻れば、疲れ果てて掃除をする気にもなれなかった。
一ヶ月も経つと、アパートの六畳間は夢の島と化した。
万年床の周りには、ビールの空き缶や乾き物の空き袋が散乱し、部屋の隅には、洗っていない洗濯物が小山を築いた。
捨て忘れた生ゴミと黒カビが蔓延る浴槽からは、鼻を摘みたくなる異臭が立ちこめた。
一人暮らしで酒量も増えた。
得意先の接待や、部下を飲みに連れて行くことも多かったが、自炊ができないため、夜は近くの小料理屋に通って飯を食った。
行けばついつい酒を飲む。
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