『色褪せぬ薔薇』・・・第四章
『色褪せぬ薔薇』
第四章
杜の都、仙台。
駅で待ち受けていた社用車に乗り込むと、秀明は慌しく仙台の街へ滑り出した。
市街地に雪はなかった。
仙台へは時々出張で訪れるが、どこか今日は、その街並みが懐かしく思えてならなかった。
昼の会食と表敬訪問を終えた秀明は、東北支社に入るや営業会議に臨んだ。
すでに大会議室には、東北で営業する百名近くの社員が集っていた。
東北支社長が秀明の参着を告げると、会議室はしんと静まり返った。
「私も若い頃、皆さんと同じように、この東北支社で営業をしていました・・」
静聴する社員に、秀明は自分が歩んできた会社人生を熱く語った。
だが最後を締め括った言葉が、今秀明の直面している苦悩を吐露していた。
「・・しかしだ、仕事と言う美称に溺れてはいけない。周囲の仲間や家族への愛情を忘れず、会社と共に人生を豊かなものにして頂きたい」
社員から一斉に大きな拍手が起きた。
ひな壇から下りた秀明は、お役御免とばかりに、会議室の一番後ろの席に腰かけた。
集まった社員達の業績発表が始まると、秀明はトイレへ行くふりをしてそっと会議室を抜け出した。
階段を下りると、そこには受付と応接室、そして事務方のオフィスがある。
「こ、これは、吉川専務」
業務課長の山下良之が、秀明の姿を見つけて慌てて席を立った。
同時に十名ほどの業務課員達が秀明に頭を下げた。
「何かご用がございますか?」
「ん、いや・・」
業務課員を見渡した秀明は、山下一人を廊下へ連れ出した。
秀明は小さく咳払いした。
「大崎葉子君に会いたいのだが」
「えっ、大崎・・大崎など・・あっ、もしかすると駒木葉子さんのことですか? 確か昔は、大崎姓だったと聞いたことがありますが・・しかし何故・・」
つづく…
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昼の会食と表敬訪問を終えた秀明は、東北支社に入るや営業会議に臨んだ。
すでに大会議室には、東北で営業する百名近くの社員が集っていた。
東北支社長が秀明の参着を告げると、会議室はしんと静まり返った。
「私も若い頃、皆さんと同じように、この東北支社で営業をしていました・・」
静聴する社員に、秀明は自分が歩んできた会社人生を熱く語った。
だが最後を締め括った言葉が、今秀明の直面している苦悩を吐露していた。
「・・しかしだ、仕事と言う美称に溺れてはいけない。周囲の仲間や家族への愛情を忘れず、会社と共に人生を豊かなものにして頂きたい」
社員から一斉に大きな拍手が起きた。
ひな壇から下りた秀明は、お役御免とばかりに、会議室の一番後ろの席に腰かけた。
集まった社員達の業績発表が始まると、秀明はトイレへ行くふりをしてそっと会議室を抜け出した。
階段を下りると、そこには受付と応接室、そして事務方のオフィスがある。
「こ、これは、吉川専務」
業務課長の山下良之が、秀明の姿を見つけて慌てて席を立った。
同時に十名ほどの業務課員達が秀明に頭を下げた。
「何かご用がございますか?」
「ん、いや・・」
業務課員を見渡した秀明は、山下一人を廊下へ連れ出した。
秀明は小さく咳払いした。
「大崎葉子君に会いたいのだが」
「えっ、大崎・・大崎など・・あっ、もしかすると駒木葉子さんのことですか? 確か昔は、大崎姓だったと聞いたことがありますが・・しかし何故・・」
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