『色褪せぬ薔薇』・・・第三章
『色褪せぬ薔薇』
第三章
競争社会である。
勝者がいれば必ず敗者が生まれる。
敗れた彼等は、秀明の前では従順に跪いているが、裏では嫉ましい目つきで恨み呪っている。
そして秀明の失脚を虎視眈々と狙っているのだ。
身内である家族にしても、その絆は疾うの昔に断ち切れていた。
深夜残業、休日出勤、接待、ゴルフ――長年家族を顧みなかった報いでだった。
妻とは一度も喧嘩をしたことがない。
それは喧嘩ができるほど妻を知らないからだった。
冷え切った妻子との関係は、秀明が残すであろう財産で繋がっているに過ぎなかった。
秀明は小さくため息をついた。
出世と言う栄誉の陰で、秀明は家族も含めて多くの人達を無意識に傷つけてきた。
そして気がつけば、友もなく、家族もない、一人ぼっちの老人になっていた。
トップは孤独だと言う。
だが秀明は、それに堪え得る強い男か自信が持てずにいた。実は人一倍寂しがり屋だった。
もし時間を巻き戻せるなら、出世などせずとも、家族や友人と心通じる人生をやり直したいと思っていた。
新幹線が長いトンネルを抜けた。
もう仙台は近い。冬の東北には珍しく、暗い雲の隙間に青空が覗いている。
(葉子・・)
秀明には、今回の仙台出張で是非とも詫びたい女性がいた。
家族よりも、社内のライバル達よりも、かつて秀明が酷い仕打ちをしてしまった女性だった。
峰に白銀を頂く山々へ目を細めながら、秀明は葉子の顔を密かに想い浮かべた。
つづく…
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そして秀明の失脚を虎視眈々と狙っているのだ。
身内である家族にしても、その絆は疾うの昔に断ち切れていた。
深夜残業、休日出勤、接待、ゴルフ――長年家族を顧みなかった報いでだった。
妻とは一度も喧嘩をしたことがない。
それは喧嘩ができるほど妻を知らないからだった。
冷え切った妻子との関係は、秀明が残すであろう財産で繋がっているに過ぎなかった。
秀明は小さくため息をついた。
出世と言う栄誉の陰で、秀明は家族も含めて多くの人達を無意識に傷つけてきた。
そして気がつけば、友もなく、家族もない、一人ぼっちの老人になっていた。
トップは孤独だと言う。
だが秀明は、それに堪え得る強い男か自信が持てずにいた。実は人一倍寂しがり屋だった。
もし時間を巻き戻せるなら、出世などせずとも、家族や友人と心通じる人生をやり直したいと思っていた。
新幹線が長いトンネルを抜けた。
もう仙台は近い。冬の東北には珍しく、暗い雲の隙間に青空が覗いている。
(葉子・・)
秀明には、今回の仙台出張で是非とも詫びたい女性がいた。
家族よりも、社内のライバル達よりも、かつて秀明が酷い仕打ちをしてしまった女性だった。
峰に白銀を頂く山々へ目を細めながら、秀明は葉子の顔を密かに想い浮かべた。
つづく…
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