『遠距離夫婦』・・・第十九章
『遠距離夫婦』
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第十九章
ドアを叩く音がする。
二日酔いの頭が、寺の鐘を間近で撞かれたような衝撃に揺れる。
カーテンを開けると、目映い陽射しが目に突き刺さって痛い。
時計はもう十時を回っている。
「はい、はい」
どうせ宅急便か何かだろうと、和久はジャージ姿のまま、覚束ない足取りで玄関のドアを開けた。
そこには妻の清美が立っていた。
「え? どうして・・」
唖然とする和久を尻目に、清美はきょろきょろと部屋の中を覗き込んだ。
「一人なの?」
不意の問いかけに、和久は清美が突然会津へ訪ねて来た理由を理解した。
「ふん、抜き打ち検査か?」
昨夜悶々とした清美への恋情は一瞬に瓦解した。
換わって頭をもたげたのは、離婚を有利に進めるため、浮気の証拠を探しに来たのではという疑心だった。
「ち、違うわ。昨日の夜連絡したけど、あなたの携帯がつながらなかったのよ」
清美はちょっと怒った表情を見せ、勝手に部屋へ上がり込んできた。
そう言われて和久は、昨夜携帯を部屋に置きっ放しにして、山下と飲みに行ったことを思い出した。
部屋の片隅へ和久を追いやると、清美は忙しく動き回って掃除を始めた。
「洋和はどうしたんだ?」
「あなたの実家へ行きました。今晩泊まって明日の夜帰って来るって」
「あいつも名古屋へ一人で遊びに行ける年になったのか」
「ええ、もう親離れね。中学に入ったら全然私の言うことなんか聞かないわ」
清美は流しで洗いものをしながら寂しそうに答えた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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ドアを叩く音がする。
二日酔いの頭が、寺の鐘を間近で撞かれたような衝撃に揺れる。
カーテンを開けると、目映い陽射しが目に突き刺さって痛い。
時計はもう十時を回っている。
「はい、はい」
どうせ宅急便か何かだろうと、和久はジャージ姿のまま、覚束ない足取りで玄関のドアを開けた。
そこには妻の清美が立っていた。
「え? どうして・・」
唖然とする和久を尻目に、清美はきょろきょろと部屋の中を覗き込んだ。
「一人なの?」
不意の問いかけに、和久は清美が突然会津へ訪ねて来た理由を理解した。
「ふん、抜き打ち検査か?」
昨夜悶々とした清美への恋情は一瞬に瓦解した。
換わって頭をもたげたのは、離婚を有利に進めるため、浮気の証拠を探しに来たのではという疑心だった。
「ち、違うわ。昨日の夜連絡したけど、あなたの携帯がつながらなかったのよ」
清美はちょっと怒った表情を見せ、勝手に部屋へ上がり込んできた。
そう言われて和久は、昨夜携帯を部屋に置きっ放しにして、山下と飲みに行ったことを思い出した。
部屋の片隅へ和久を追いやると、清美は忙しく動き回って掃除を始めた。
「洋和はどうしたんだ?」
「あなたの実家へ行きました。今晩泊まって明日の夜帰って来るって」
「あいつも名古屋へ一人で遊びに行ける年になったのか」
「ええ、もう親離れね。中学に入ったら全然私の言うことなんか聞かないわ」
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