『遠距離夫婦』・・・第二十章
『遠距離夫婦』
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第二十章
和久は珍しくおしゃれした妻の後姿に見入った。
新緑の五月に相応しい若葉色の七分袖のセーターと、細身に締まったグレーのパンツが、ふくよかなボディラインを描き出している。
ちょっと皮肉っぽく和久は言葉を投げた。
「洋和に相手にされないから、仕方なく会津へ来たわけか」
「そ、そうじゃないわよ。たまには掃除に来ないと、ほら、ゴミ捨て場みたいじゃない」
慌てて否定したが、清美の中で母親という役割が揺らいでいるのを和久は知った。
「でも黙って会津まで来て、この部屋に女がいたらどうするつもりだったんだ?」
「その時は・・」
清美は振り向いて和久を睨みつけ、流しから洗ったばかりの包丁を握って見せた。
「ぶ、物騒だな」
「・・本当に浮気しているの?」
和久の答えを待つ清美の瞳が落ち着きなく揺れた。
嫉妬する清美を意外に思いながらも、和久は思わせぶりな素振りで話を継いだ。
「どうかな?」
「でも女がいるならこんなに部屋が散らかるわけないわ」
「別に部屋へ連れ込むとは限らないぞ。昨夜ホテルで会っていたかもしれないじゃないか」
「・・知らない」
ぷいっとむくれた清美が眩しく見えた。
肩にかかるブラウンの髪が豊かなウエーブを描いている。
若かりし頃の童顔は、三十六になって成熟した大人の艶を帯び、今が盛りとその華やかさを放散している。
和久は十年以上も一緒に暮らしていながら、妻の顔などほとんど見ていなかった自分に気がついた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
★『降矢木士朗・紅殻格子 メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介はこちらです★
官能小説ランキングに参加しています。応援、宜しくお願いしますm(__)m
にほんブログ村 恋愛小説(愛欲)
FC2 官能小説 人気ブログランキング~愛と性~
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第二十章
和久は珍しくおしゃれした妻の後姿に見入った。
新緑の五月に相応しい若葉色の七分袖のセーターと、細身に締まったグレーのパンツが、ふくよかなボディラインを描き出している。
ちょっと皮肉っぽく和久は言葉を投げた。
「洋和に相手にされないから、仕方なく会津へ来たわけか」
「そ、そうじゃないわよ。たまには掃除に来ないと、ほら、ゴミ捨て場みたいじゃない」
慌てて否定したが、清美の中で母親という役割が揺らいでいるのを和久は知った。
「でも黙って会津まで来て、この部屋に女がいたらどうするつもりだったんだ?」
「その時は・・」
清美は振り向いて和久を睨みつけ、流しから洗ったばかりの包丁を握って見せた。
「ぶ、物騒だな」
「・・本当に浮気しているの?」
和久の答えを待つ清美の瞳が落ち着きなく揺れた。
嫉妬する清美を意外に思いながらも、和久は思わせぶりな素振りで話を継いだ。
「どうかな?」
「でも女がいるならこんなに部屋が散らかるわけないわ」
「別に部屋へ連れ込むとは限らないぞ。昨夜ホテルで会っていたかもしれないじゃないか」
「・・知らない」
ぷいっとむくれた清美が眩しく見えた。
肩にかかるブラウンの髪が豊かなウエーブを描いている。
若かりし頃の童顔は、三十六になって成熟した大人の艶を帯び、今が盛りとその華やかさを放散している。
和久は十年以上も一緒に暮らしていながら、妻の顔などほとんど見ていなかった自分に気がついた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
★『降矢木士朗・紅殻格子 メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介はこちらです★
官能小説ランキングに参加しています。応援、宜しくお願いしますm(__)m
にほんブログ村 恋愛小説(愛欲)
FC2 官能小説 人気ブログランキング~愛と性~