『遠距離夫婦』・・・第十五章
『遠距離夫婦』
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第十五章
和久はそうかもしれないと思った。
まだ単身一ヶ月半だが、ゴールデンウイークで松戸に戻った時、どこか他人の家にいるような居心地の悪さを感じた。
それは和久がいてもいなくても、清美と洋和の生活には何の差し障りもないからだ。
つまり必要とされない人間は、そこにいなければならない理由がないのだ。
(一体俺は・・?)
清美が聖母に変身した時から、和久は家庭での居場所を失っていた。
単身前はその寂しさを美穂で誤魔化していたのだ。
ところがこうして独りになると、会社も家庭も美穂も、和久を必要となどしていないことを改めて実感させられる。
和久はぐっとお猪口を空にした。
「お、飲みっぷりがいいね」
「ここにしか居場所がないって、山下さんが言った意味がよくわかりますよ」
「ほう、わかってくれるか。でも新井さんはまだ幸せな方だと思うよ。俺なんか居場所がないと言うより、居場所を奪われてしまったんだからね」
「それはどういうことですか?」
和久は赤ら顔の山下に尋ねた。
「妻が浮気しているんだよ」
賑やかな居酒屋で、二人の座るテーブルだけが凍りついた。
普段は陽気な山下の顔が深い苦悩の色に滲んでいる。
「新井さんに話しても仕方ないんだが、一人で心の中にしまっておくのも苦しくてね。恥をさらすようだが、反面教師として聞いてくれるかな」
そう前置きすると、山下は煙草に火をつけてぽつりぽつりと話し始めた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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和久はそうかもしれないと思った。
まだ単身一ヶ月半だが、ゴールデンウイークで松戸に戻った時、どこか他人の家にいるような居心地の悪さを感じた。
それは和久がいてもいなくても、清美と洋和の生活には何の差し障りもないからだ。
つまり必要とされない人間は、そこにいなければならない理由がないのだ。
(一体俺は・・?)
清美が聖母に変身した時から、和久は家庭での居場所を失っていた。
単身前はその寂しさを美穂で誤魔化していたのだ。
ところがこうして独りになると、会社も家庭も美穂も、和久を必要となどしていないことを改めて実感させられる。
和久はぐっとお猪口を空にした。
「お、飲みっぷりがいいね」
「ここにしか居場所がないって、山下さんが言った意味がよくわかりますよ」
「ほう、わかってくれるか。でも新井さんはまだ幸せな方だと思うよ。俺なんか居場所がないと言うより、居場所を奪われてしまったんだからね」
「それはどういうことですか?」
和久は赤ら顔の山下に尋ねた。
「妻が浮気しているんだよ」
賑やかな居酒屋で、二人の座るテーブルだけが凍りついた。
普段は陽気な山下の顔が深い苦悩の色に滲んでいる。
「新井さんに話しても仕方ないんだが、一人で心の中にしまっておくのも苦しくてね。恥をさらすようだが、反面教師として聞いてくれるかな」
そう前置きすると、山下は煙草に火をつけてぽつりぽつりと話し始めた。
つづく・・・
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