『遠距離夫婦』・・・第十三章
『遠距離夫婦』
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第十三章
引っ越しから一ヶ月ちょっとしか経っていないのに、六畳一間の部屋は、まるでゴミ置き場さながらの様相を呈していた。
脱ぎ散らかした服、暇つぶしに買ってきた雑誌、飲んだまま置きっぱなしのペットボトルとビール缶――それらが狭い和室に散乱して足の踏み場もない。
だがゴミの賑やかさと比べて、部屋の空気はどんよりと黴臭く墓場のように沈んでいた。
重々しい空気に堪えかねた和久は携帯電話を取り出した。じっと待受画面を見つめる。
だが電話やメールが入った形跡すらない。
妻の清美から週二三回業務連絡が入る以外は、全く携帯自体が無用の長物になりつつあった。
「美穂・・」
和久はわざと声に出してその名を呼んでみた。
だがその声紋は、がらんと静寂な部屋の壁に虚しく消えて行った。
会社の規定で、帰省交通費は月一度分しか出ない。
自腹で帰ることもできるが、経済的にも苦しく、結局四月は一度も松戸へ戻れなかった。
密会する機会もなく、美穂からの電話も赴任十日で途絶えた。
ゴールデンウイークに初めて松戸へ戻った和久は、早速美穂に携帯で電話した。
だが返ってきたのは、海外旅行でしばらく留守にすると言うメッセージだけだった。
あれほど愛情を注いだ美穂だが、会津との長い道程の前に、その遠距離恋愛はいとも儚く潰えてしまったのだ。
(寂しい)
会津へ来て独り言が増えた和久だが、出かかったその言葉はかろうじて心の中に呑み込んだ。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
★『降矢木士朗・紅殻格子 メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介はこちらです★
官能小説ランキングに参加しています。応援、宜しくお願いしますm(__)m
にほんブログ村 恋愛小説(愛欲)
FC2 官能小説 人気ブログランキング~愛と性~
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第十三章
引っ越しから一ヶ月ちょっとしか経っていないのに、六畳一間の部屋は、まるでゴミ置き場さながらの様相を呈していた。
脱ぎ散らかした服、暇つぶしに買ってきた雑誌、飲んだまま置きっぱなしのペットボトルとビール缶――それらが狭い和室に散乱して足の踏み場もない。
だがゴミの賑やかさと比べて、部屋の空気はどんよりと黴臭く墓場のように沈んでいた。
重々しい空気に堪えかねた和久は携帯電話を取り出した。じっと待受画面を見つめる。
だが電話やメールが入った形跡すらない。
妻の清美から週二三回業務連絡が入る以外は、全く携帯自体が無用の長物になりつつあった。
「美穂・・」
和久はわざと声に出してその名を呼んでみた。
だがその声紋は、がらんと静寂な部屋の壁に虚しく消えて行った。
会社の規定で、帰省交通費は月一度分しか出ない。
自腹で帰ることもできるが、経済的にも苦しく、結局四月は一度も松戸へ戻れなかった。
密会する機会もなく、美穂からの電話も赴任十日で途絶えた。
ゴールデンウイークに初めて松戸へ戻った和久は、早速美穂に携帯で電話した。
だが返ってきたのは、海外旅行でしばらく留守にすると言うメッセージだけだった。
あれほど愛情を注いだ美穂だが、会津との長い道程の前に、その遠距離恋愛はいとも儚く潰えてしまったのだ。
(寂しい)
会津へ来て独り言が増えた和久だが、出かかったその言葉はかろうじて心の中に呑み込んだ。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
★『降矢木士朗・紅殻格子 メディア掲載作品&携帯小説配信サイト』紹介はこちらです★
官能小説ランキングに参加しています。応援、宜しくお願いしますm(__)m
にほんブログ村 恋愛小説(愛欲)
FC2 官能小説 人気ブログランキング~愛と性~