『遠距離夫婦』・・・第十二章
『遠距離夫婦』
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第十二章
厳冬の会津も、若葉萌え出す遅い春を迎えて、夜の冷え込みもいくらか和らぎつつある。
ゴールデンウイーク翌週にあたる金曜日、和久は仕事を終え、コンビニ弁当片手に一人暮らしのアパートへ帰る途中だった。
澱のようにストレスが心の底に溜まっている。
「俺の言うことが聞けないのか?」
今朝も会社の朝礼で、和久は思わず所員達を前に怒鳴り散らした。
四月に会津営業所所長として赴任して以来、地元所員との間に、埋めることができない深い溝を感じていた。
所長の和久が最初にすべき仕事は、東洋薬品の営業スタイルを徹底させることだった。
だが彼等は和久を無視した。
表立って反抗こそしないが、鈍重なまでに沈黙を守り、心の中で軽蔑の眼差しをよそ者の和久へ向けていた。
会津の人間は、戊辰戦争を例に引くまでもなく、生来頑固だと言う。
いきなり新会社の方針を押しつけられる彼等の気持ちもわかる。
わかるだけに、その狭間に置かれた和久の苛立ちは想像を絶するものになっていた。
単身暮らすアパートの前に辿り着くと、和久はその古色蒼然とした安普請を見上げた。
一階と二階合わせて八部屋あり、和久の部屋は二階の角にあたる。
ふうっと和久はため息をついた。
(花の金曜日なのに・・)
街へ出れば、原色のネオンと雪国育ちの白い肌が待っているに違いない。
だが会社で孤立している和久とつき合ってくれる所員はいない。
それに金がない。
本宅と単身宅の二重生活は相当な経済負担を強いられる。
さらに和久には私立中学に通う洋和がいる。
本宅のローンも馬鹿にならない。
八方塞がりの和久は肩を落として部屋のドアを開けた。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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厳冬の会津も、若葉萌え出す遅い春を迎えて、夜の冷え込みもいくらか和らぎつつある。
ゴールデンウイーク翌週にあたる金曜日、和久は仕事を終え、コンビニ弁当片手に一人暮らしのアパートへ帰る途中だった。
澱のようにストレスが心の底に溜まっている。
「俺の言うことが聞けないのか?」
今朝も会社の朝礼で、和久は思わず所員達を前に怒鳴り散らした。
四月に会津営業所所長として赴任して以来、地元所員との間に、埋めることができない深い溝を感じていた。
所長の和久が最初にすべき仕事は、東洋薬品の営業スタイルを徹底させることだった。
だが彼等は和久を無視した。
表立って反抗こそしないが、鈍重なまでに沈黙を守り、心の中で軽蔑の眼差しをよそ者の和久へ向けていた。
会津の人間は、戊辰戦争を例に引くまでもなく、生来頑固だと言う。
いきなり新会社の方針を押しつけられる彼等の気持ちもわかる。
わかるだけに、その狭間に置かれた和久の苛立ちは想像を絶するものになっていた。
単身暮らすアパートの前に辿り着くと、和久はその古色蒼然とした安普請を見上げた。
一階と二階合わせて八部屋あり、和久の部屋は二階の角にあたる。
ふうっと和久はため息をついた。
(花の金曜日なのに・・)
街へ出れば、原色のネオンと雪国育ちの白い肌が待っているに違いない。
だが会社で孤立している和久とつき合ってくれる所員はいない。
それに金がない。
本宅と単身宅の二重生活は相当な経済負担を強いられる。
さらに和久には私立中学に通う洋和がいる。
本宅のローンも馬鹿にならない。
八方塞がりの和久は肩を落として部屋のドアを開けた。
つづく・・・
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