『遠距離夫婦』・・・第七章
『遠距離夫婦』
※心も体も冷え切ってしまった夫婦。
そんな結婚生活にピリオドを打てとばかりに、夫は会社の転勤で単身赴任生活へ。
愛人か妻か・・・ぽっかりと夫の心に空いた隙間を埋めるのは?
第七章
昼間はよく渋滞する国道6号線も、深夜になれば、トラック以外の車は疎らにしか走っていない。
美穂を送った帰りで、時間はもう十一時半を過ぎている。
柏から自宅のある松戸へと、和久は運転する車のスピードを上げた。
前を走るトラックのテールランプへ目を遣りながら、ラブホテルで美穂と交わした会話を思い返した。
情事の余韻を楽しむように、ベッドで美穂の裸身を撫でながら、和久は我が身に降って湧いた出来事を切り出した。
「え、新井さん転勤しちゃうの?」
美穂はくりっとした瞳をさらに大きく見開いた。
「ああ、四月一日づけだけど、今日所長から内示があった」
「でも転勤先は千葉か東京ぐらいでしょう? 毎日顔を合わせるのは無理でも、週末には愛し合えるんでしょう?」
顔を覗き込む美穂に和久は首を振った。
「会津若松だ」
「え? 会津って、福島県の・・」
美穂はポカンとした表情で和久の顔を見つめた。
医薬品卸業界は戦国時代の真っ只中にある。
かつては県単位ごとに小さな地場卸が乱立していたが、合従連衡を繰り返すことで、今や数社の巨大卸に集約されようとしている。
関東に強い商圏を持つ東洋薬品もその一社で、全国制覇をもくろみ、年初に東北の地場卸を傘下に収めたばかりだった。
その吸収合併に伴う異動で、和久は会津営業所へ、所長として赴任することになったのだ。
現在は柏営業所の副所長であるから、表向きは栄転になる。
だが実際は、会津営業所は吸収した東北地場卸の拠点であり、そこにいる部下は皆、吸収に不満を募らせる社員ばかりなのだ。
つまり和久は単身敵地へ切り込むようなもので、現場での軋轢は必至だった。
出世するのは嬉しいが、正直なところ割に合わない異動だと和久は思った。
つづく・・・
『妄想の囲炉裏端・・・紅殻格子呟き日記』
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美穂を送った帰りで、時間はもう十一時半を過ぎている。
柏から自宅のある松戸へと、和久は運転する車のスピードを上げた。
前を走るトラックのテールランプへ目を遣りながら、ラブホテルで美穂と交わした会話を思い返した。
情事の余韻を楽しむように、ベッドで美穂の裸身を撫でながら、和久は我が身に降って湧いた出来事を切り出した。
「え、新井さん転勤しちゃうの?」
美穂はくりっとした瞳をさらに大きく見開いた。
「ああ、四月一日づけだけど、今日所長から内示があった」
「でも転勤先は千葉か東京ぐらいでしょう? 毎日顔を合わせるのは無理でも、週末には愛し合えるんでしょう?」
顔を覗き込む美穂に和久は首を振った。
「会津若松だ」
「え? 会津って、福島県の・・」
美穂はポカンとした表情で和久の顔を見つめた。
医薬品卸業界は戦国時代の真っ只中にある。
かつては県単位ごとに小さな地場卸が乱立していたが、合従連衡を繰り返すことで、今や数社の巨大卸に集約されようとしている。
関東に強い商圏を持つ東洋薬品もその一社で、全国制覇をもくろみ、年初に東北の地場卸を傘下に収めたばかりだった。
その吸収合併に伴う異動で、和久は会津営業所へ、所長として赴任することになったのだ。
現在は柏営業所の副所長であるから、表向きは栄転になる。
だが実際は、会津営業所は吸収した東北地場卸の拠点であり、そこにいる部下は皆、吸収に不満を募らせる社員ばかりなのだ。
つまり和久は単身敵地へ切り込むようなもので、現場での軋轢は必至だった。
出世するのは嬉しいが、正直なところ割に合わない異動だと和久は思った。
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