『愛憎の流砂』・・・第十六章
『愛憎の流砂』
※ 男の愛撫にうねる白い肌・・・
愛人に溺れる母を恨み呪う少女・・・
やがて大人になった少女は、思いもよらぬ運命に手繰られていく。
第十六章
一週間後、美幸は就職した会社の寮に入って東京での生活を始める。
華やかな東京で懸命働いて、仕送りはもちろん、銀座で母に洋服を買ってやりたいと思った。
だが美幸の顔が曇った。
壁にかかった紺のスーツが美幸の目に留まった。
「お母ちゃん、このスーツは?」
「ああ、お前が東京の会社へ行ったら着るように、蓮沼さんが買って下さったんだよ」
大人の仲間入りをした安心からだろうか、母は臆面もなく、美幸に愛人の名前を口に出した。
美幸は母を睨みつけた。
母への感謝は、一転して激しい憎悪へと変わった。
ハンガーからスーツを外すと丸めて壁に投げつけた。
「な、何てことをするんだい!」
母は慌ててスーツを拾うと、大事そうに懐へ抱え込んだ。
「そんな穢らわしい服はいらない」
「穢らわしいって・・」
「人生の門出に、不貞相手の男からもらった服なんて縁起悪いのよ」
「蓮沼さんは、ずっと陰で私達を支えてくれていたんだよ。あの人が助けてくれたから、お前だって私立高校を卒業できたんじゃないか!」
美幸は卒業証書が入った筒を畳に叩きつけた。
「愛人のお手当てでもらった卒業証書なんかいらない」
「馬鹿っ!」
母はスーツを抱えたまま、美幸の頬を平手で叩いた。
美幸は頬を押さえて大声で母を詰った。
「何が蓮沼さんのお陰よ。お母ちゃんが愛人の妾だって、私がどれだけ虐められたか知らないでしょう。ここへ引っ越ししても友達なんかできなかった。十円玉を握らされて遊んできなと言われても、寒い海へ行って一人で泣くしかなかったのよ」
「・・・・」
「お母ちゃんと二人で暮らせるなら、新聞配達をしても、中学校を出て働いても良かったのに・・」
つづく・・・
※ お知らせ ※
2月22日発売の月刊文芸誌『祥伝社・小説NON3月号』に紅殻格子作「あやかしの肌」が掲載されました。
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美幸は母を睨みつけた。
母への感謝は、一転して激しい憎悪へと変わった。
ハンガーからスーツを外すと丸めて壁に投げつけた。
「な、何てことをするんだい!」
母は慌ててスーツを拾うと、大事そうに懐へ抱え込んだ。
「そんな穢らわしい服はいらない」
「穢らわしいって・・」
「人生の門出に、不貞相手の男からもらった服なんて縁起悪いのよ」
「蓮沼さんは、ずっと陰で私達を支えてくれていたんだよ。あの人が助けてくれたから、お前だって私立高校を卒業できたんじゃないか!」
美幸は卒業証書が入った筒を畳に叩きつけた。
「愛人のお手当てでもらった卒業証書なんかいらない」
「馬鹿っ!」
母はスーツを抱えたまま、美幸の頬を平手で叩いた。
美幸は頬を押さえて大声で母を詰った。
「何が蓮沼さんのお陰よ。お母ちゃんが愛人の妾だって、私がどれだけ虐められたか知らないでしょう。ここへ引っ越ししても友達なんかできなかった。十円玉を握らされて遊んできなと言われても、寒い海へ行って一人で泣くしかなかったのよ」
「・・・・」
「お母ちゃんと二人で暮らせるなら、新聞配達をしても、中学校を出て働いても良かったのに・・」
つづく・・・
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