小説「懺悔」 第三章・・・
『懺 悔』 紅殻格子
三.
今、主人が家を出て仙台へ向かいました。
「行ってらっしゃい」
私は玄関まで見送ると、しばらくそこに立ち尽くしていました。
リビングに戻るのが怖かったからです。
表面だけ取り繕う冷たい夫婦関係は、お互い様と言ってしまえばそれまでです。
でも私が犯した罪は、主人を裏切るだけでは済まなかったのです。
もっと恐ろしい代償が待っていたのです。
リビングでは息子の智彦がソファに座ってテレビを見ていました。
「親父は出かけたのか?」
「・・え、ええ」
先ほどの団欒からは想像できない息子の乱暴な言葉に、私は半ば怯えるように答えました。
「ったく、親父が家にいると、いい子ぶらないといけないから疲れるよ。
ほら、そんな所に突っ立ってないでここへ座れよ」
ソファにふんぞり返った智彦は、足元のフローリングを指差しました。
とても高校一年生が母親に向かって話す言葉遣いではありません。
「ねえ、お願い。もうこんなこと止めて」
恐る恐る私は智彦の前に跪くと、母親のプライドを捨てて許しを乞いました。
でも智彦は冷たく私を見下し、ニヤッと口許を歪めただけでした。
「いつから僕に説教できる偉い母親になったのかな?」
智彦はそう凄んで私を睨みつけると、穿いていたジャージを膝までずらしました。
智彦は、母親である私の前で男性を露にしたのです。
「ああ・・」
私は絶望のあまり声を上げてしまいました。
それは智彦が小さかった頃の可愛いオチンチンではありません。
赤黒く凶悪な男の性器です。
大人になっても、顔立ちには子供の頃の面影が残っていますが、
男性は全く別物の如くグロテスクに変貌していました。
しかもそれは実の母親を前にして、大きくそそり立ってピクッピクッと脈打っているのです。
「ほら、早く咥えろよ」
男性の丸い先端を私に突き出し、智彦は能面のように無表情な顔で命じました。
もう蛇に睨まれた蛙と同様で、私は息子の命令に従うしかありませんでした。
硬直した灼熱の男性をつかむと、私は目を瞑ってゆっくりとその先端を口に含みました。
つづく・・・