『愛憎の流砂』・・・第九章
『愛憎の流砂』
※ 男の愛撫にうねる白い肌・・・
愛人に溺れる母を恨み呪う少女・・・
やがて大人になった少女は、思いもよらぬ運命に手繰られていく。
第九章
翌朝、美幸は颯爽と自転車を漕いでいた。
横浜市北部の郊外。
芽吹きを迎えた明るい雑木林の丘陵を下りると、蛇行して流れる鶴見川が眼下に開けてくる。
川沿いに果樹園が点在している。
枝がたわむほど白い花をつけた梨が、新緑彩る大地に春霞が棚引くように咲いていた。
その田園の傍らに鉄筋二階建ての社屋が建っている。
青砥建設。
社員が三十人あまりの小さな土建会社は、道路や下水などの公共工事や、大手建設会社の下請け工事を生業にしていた。
美幸は一階の資材置き場に自転車を停めて、階段を上がって二階の事務所へ向かった。
結婚前の職歴を買われた美幸は、三ヶ月前から経理のパート社員として勤めていた。
(緑の芝生と仔犬のために頑張らなきゃ)
もちろん夫の給料だけで親子三人なら十分暮らせるが、美幸は一日も早く理想の家庭像を完成させたかった。
佐久田家は、今、賃貸マンションで暮らしている。
愛美が小学生になったのを機会に、一戸建てマイホームが欲しいと正彦にねだった。
銀行員の正彦も、ローン金利や住宅減税を考えると、今が買い時だと考えているようだった。
だが頭金が足りない。
美幸が働きたいと言うと、母親業を疎かにしないことを条件に許してくれた。
愛美を犠牲にするのは美幸にとっても本末転倒である。
そこでマンションから自転車で五分の青砥建設を選んだ。
決算や税務申告がない時は、愛美を学校へ送り出した九時から、下校する前の二時までが勤務時間になっていた。
つづく・・・
※ お知らせ ※
2月22日発売の月刊文芸誌『祥伝社・小説NON3月号』に紅殻格子作「あやかしの肌」が掲載されました。
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青砥建設。
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美幸は一階の資材置き場に自転車を停めて、階段を上がって二階の事務所へ向かった。
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(緑の芝生と仔犬のために頑張らなきゃ)
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佐久田家は、今、賃貸マンションで暮らしている。
愛美が小学生になったのを機会に、一戸建てマイホームが欲しいと正彦にねだった。
銀行員の正彦も、ローン金利や住宅減税を考えると、今が買い時だと考えているようだった。
だが頭金が足りない。
美幸が働きたいと言うと、母親業を疎かにしないことを条件に許してくれた。
愛美を犠牲にするのは美幸にとっても本末転倒である。
そこでマンションから自転車で五分の青砥建設を選んだ。
決算や税務申告がない時は、愛美を学校へ送り出した九時から、下校する前の二時までが勤務時間になっていた。
つづく・・・
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