『愛憎の流砂』・・・第四章
『愛憎の流砂』
※ 男の愛撫にうねる白い肌・・・
愛人に溺れる母を恨み呪う少女・・・
やがて大人になった少女は、思いもよらぬ運命に手繰られていく。
第四章
網元のお妾さん。
口さがない村の年寄りは陰で母をそう呼んだ。
狭い漁村でスキャンダルはすぐに広まった。
眉を顰めて話す大人の話に、子供もしっかりと聞き耳立てている。
そうでなくても馴染めない転校生の少女は、同級生から妾の子と囃し立てられていじめられた。
少女には友達などいなかった。
十円玉を握らされた少女は、行く当てもなく、しばらく庭の垣根にもたれて佇んでいた。
隙間だらけの家から母の声が聞こえてきた。
「娘は遊びに行ったわ・・ねえ、お願いよ、もう一回・・」
男に甘える母の嬌声に、少女は耳を塞いで庭を飛び出した。
孤独な少女の居場所は海だけだった。
裸の女達に押されて、ギシギシと船体を軋ませながら、ペンキの剥げた木造船が浜へ上がってくる。
波飛沫をかぶった女の日焼けした肌が、冬の寒さにも負けず健康的に踊っていた。
少女は羨ましかった。
母の白く艶かしい肌は、働くためにではなく、男を引き寄せて楽しませる道具だった。
貧しくてもいい。
少女は男に媚を売る母ではなく、逞しく働いてくれる母であって欲しかった。
だが少女には母しかいない。
同級生に虐められようが、村中から白い目で見られようが、母の庇護がなければ生きることができない。
夕方になって家へ戻ったら、何も知らない振りをして、母に愛想笑いを浮かべて食卓を囲まなければならないのだ。
この頃から少女は、感情を封じ込めるすべを覚えていったのかもれない。
少女は袖で頬の涙を拭った。
「お母ちゃんの馬鹿っ!」
そしてぎゅっと口唇を噛むと、十円玉を力任せに海へ放り投げた。
つづく・・・
※ お知らせ ※
2月22日発売の月刊文芸誌『祥伝社・小説NON3月号』に紅殻格子作「あやかしの肌」が掲載されました。
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隙間だらけの家から母の声が聞こえてきた。
「娘は遊びに行ったわ・・ねえ、お願いよ、もう一回・・」
男に甘える母の嬌声に、少女は耳を塞いで庭を飛び出した。
孤独な少女の居場所は海だけだった。
裸の女達に押されて、ギシギシと船体を軋ませながら、ペンキの剥げた木造船が浜へ上がってくる。
波飛沫をかぶった女の日焼けした肌が、冬の寒さにも負けず健康的に踊っていた。
少女は羨ましかった。
母の白く艶かしい肌は、働くためにではなく、男を引き寄せて楽しませる道具だった。
貧しくてもいい。
少女は男に媚を売る母ではなく、逞しく働いてくれる母であって欲しかった。
だが少女には母しかいない。
同級生に虐められようが、村中から白い目で見られようが、母の庇護がなければ生きることができない。
夕方になって家へ戻ったら、何も知らない振りをして、母に愛想笑いを浮かべて食卓を囲まなければならないのだ。
この頃から少女は、感情を封じ込めるすべを覚えていったのかもれない。
少女は袖で頬の涙を拭った。
「お母ちゃんの馬鹿っ!」
そしてぎゅっと口唇を噛むと、十円玉を力任せに海へ放り投げた。
つづく・・・
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