『妻は官能小説家』・・・第十九章
『妻は官能小説家』
~作品紹介~
男と女を卒業してしまった夫婦。
セックスレスの妻から目をそらして、愛人との淫欲に溺れる夫。
だが妻は、密かに慕う男との愛欲を密かに小説に綴っていた。
その小説を読んだ夫は・・
第十九章
翌日、未来を実家に預けると、留美は念入りに化粧を施し、胸元が大きく開いて裾丈が短いワンピースを着て家を出た。
待ち合わせ場所の駅で佇んでいると、車に乗った昌尚がロータリーに現れた。
「ごめん、ちょっと遅刻したかな?」
「いえ、私も今来たところです」
待ち合わせ時間より十五分も早く来ていた留美は、愛らしい女子高校生のような嘘を口にした。
イタリア料理のランチを食べながら、留美は上目遣いに昌尚を見つめた。
「お忙しいのに、わざわざ来て戴いて・・」
「いえ大丈夫ですよ。今日は楽しいひと時を過ごしましょう」
昌尚は、留美がどうして切羽詰ったメールを送ったかは尋ねなかった。
ただパスタを食べながら、面白い話題で留美を笑わせてくれた。
(優しい人)
留美はその心遣いが嬉しかった。
いきなり会いたいと何度も書けば、普通の男なら必ず理由を聞きたがるものだ。
だが昌尚は何があったかを聞こうともせず、留美をそっと励ましてくれているのだ。
昼食を終えた昌尚は、留美を再び車へ誘った。
車は郊外へ走って行く。
どこへ行くのか昌尚は語らず、留美も聞こうとはしなかった。
「抱きたい」
フロントガラスを見つめたまま、昌尚はぽつりと呟いた。
「・・はい」
躊躇いはなかった。
夫の顔も未来の顔も浮かばなかった。
だが昌尚が本気で留美を愛しているとは思えなかった。
遊びなのだろう。
それでも良かった。
今の留美には昌尚しか見えていなかった。
つづく・・
※ お知らせ ※
2月22日発売の月刊文芸誌『祥伝社・小説NON3月号』に紅殻格子作「あやかしの肌」が掲載されました。
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