『妻は官能小説家』・・・第十四章
『妻は官能小説家』
~作品紹介~
男と女を卒業してしまった夫婦。
セックスレスの妻から目をそらして、愛人との淫欲に溺れる夫。
だが妻は、密かに慕う男との愛欲を密かに小説に綴っていた。
その小説を読んだ夫は・・
第十四章 ※現実界にて・・・
月曜日、年末を控えた出版社は、朝から慌しい喧騒に包まれていた。
編集長が声高に雄士を呼んだ。
「荒木君、報告がないけど、保坂先生のゲラは校正が終わったのか?」
「あ、済みません・・もう終わっています」
慌てて雄士は、校正したゲラを編集長に渡した。
じろりと編集長は雄士を睨むと、ゲラ刷りに目を通し始めた。
「あれ、ここの件、どうして変えちゃったのかな?」
熟年夫婦の離婚を扱った小説だった。
離婚を言い渡されそうな主人公の男性が、妻に自分が浮気した女の数を語る場面が書かれていた。
「それは主人公の心情にそぐわないと考えて、保坂先生に書き直してもらいました」
「どうしてだ。俺が主人公だったら、間違いなく同じことをしているよ」
「いや、しかし・・妻に見捨てられたくない男が、どうしてわざわざ裏切りの過去を語るんですか?」
「そりゃ、男として認められたいからだよ」
雄士はよくわからなかった。だが頑強として編集長は、元の文章を変えるなと命じた。
「わかりました。保坂先生に連絡します」
席へ戻ろうした雄士に、編集長はぽつりと呟いた。
「荒木君は最近気も漫ろだな」
「・・申し訳ありません」
編集長席から項垂れて戻った雄士は、ぼんやりしたまま受話器を手にした。
課長が指摘した通り、雄士はこの二三日、腑抜けた状態で過ごしていた。
つづく・・
※ お知らせ ※
2月22日発売の月刊文芸誌『祥伝社・小説NON3月号』に紅殻格子作「あやかしの肌」が掲載されました。
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