『妻は官能小説家』・・・第九章
『妻は官能小説家』
~作品紹介~
男と女を卒業してしまった夫婦。
セックスレスの妻から目をそらして、愛人との淫欲に溺れる夫。
だが妻は、密かに慕う男との愛欲を密かに小説に綴っていた。
その小説を読んだ夫は・・
第九章
※小説の中に挿入された小説↓を「作中作」と称します。
『クリスマスローズ』 三橋美佳
目尻の小皺、弛み加減な頬、首から顎についた贅肉――いくら気をつけても、女は三十路を越えると衰えが目立ってくる。
小室留美は、洗面台の鏡を見てフウッとため息をついた。
(もう誰も女として見てくれないかしら・・)
三十六歳。
まだまだ老け込む年ではない。
だが若い頃と比べれば、ファンデーションを塗る時間は倍に増えていた。
「ママ、早く行こうよ」
五歳になる娘の未来が急かせた。
今日は幼稚園の友達、加納愛莉母娘と、子供向けアニメ映画を観に行く約束をしていた。
電車に乗って繁華街の映画館に着くと、冬休みに入ったせいか、そこは子供連れの親子で黒山の人だかりだった。
愛莉が未来を見つけて走ってきた。
「未来ちゃん、遅い。一時からの予約はもういっぱいだって」
「ええっ、じゃあ一緒に観られないの?」
未来は目に涙を溜めて留美を睨んだ。
「ママがお化粧ばかりしているからいけないのよ」
「ご、ごめん・・未来・・」
泣きだしそうな未来をどう慰めるか、留美はおろおろして周囲を見た。
すると年の頃は三十代半ばぐらいだろうか、明るいブラウンのジャケットを着た男が近づいてきた。
「こら愛莉、未来ちゃんを泣かせちゃダメだろう」
愛莉はペロッと舌を出すと、その男の背中に隠れた。
愛莉の父、加納昌尚だった。
「ほら、未来ちゃんのチケットも一緒に買っておいたよ」
「ありがとう」
チケットを渡された未来は、嬉しそうに愛莉と飛び跳ねた。
留美はチケット代を渡して何度も頭を下げた。
「申し訳ありません。こんなに混んでいるとは思わなくて」
「私も吃驚しました。まあ女性はお化粧に時間がかかりますからね」
「嫌だ、聞いていらっしゃったんですか」
かっと頬が上気するのがわかった。
昌尚はそんな留美を見てニコニコ笑った。
つづく・・
※ お知らせ ※
2月22日発売の月刊文芸誌『祥伝社・小説NON3月号』に紅殻格子作「あやかしの肌」が掲載されました。
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