小説 「妄想の仮面」 第十章・・・
※ 小説を読まれる方へ・・・
更新記事は新着順に表示されますので小説を最初から順追って
お読みになりたい方は、左のカテゴリーから各小説を選択していただければ
第一章からお読みいただけるようになっております ※
『妄想の仮面』 紅殻格子
十.妻の独白(四)
あの夜以来、清川君の言葉が私の耳にこびりついて離れません。
「でも私にとって奥さんは妻でも母でもありません。一人の女であるだけです」
まるで密教の陀羅尼を唱えるかのように、その呪文は体の中を駆け巡って行きます。
(一人の女・・)
すると不思議なことに、今まで意識していなかった私の中で、別の人格が心臓の鼓動を刻み始めたのです。
(清川君が好き)
それが私に住みついてしまった女の第一声でした。 私は途惑いました。
平日の午前中、主人と愛美を家から送り出すと、決まって女の私が現れるようになったからです。
家事をする途中、ふと洗面台の鏡を覗き込んでみました。
清川君に奪われた口唇。
まだ彼の口唇の感触が残っています。
(いけないわ・・そんな関係は許されないのに・・)
でもそんな心とは裏腹に、下腹部がじんと痺れて、全身が燃えるように熱く火照ってきます。 恥ずかしいことです。
ブラに触れている乳首が、キュンと敏感に立ってきます。 そしてショーツの中も、むずむずして湿ってくるのがわかりました。
「あ、ああん・・」
勝手に指がショーツの中へ滑り込んでいきます。 もうぐしょぐしょです。子供を産んだ四十歳間近のオバサンが、朝から自慰に耽っているのです。 洗面台で立ったまま、私は小さく彼の名前を呼びました。
「き、清川君・・」
その禁断の六文字を口にしただけで、私の中の女は狂ったように暴れ出します。
痛いほど尖ってしまった乳首を摘むと、淫らな電流が体中を走り抜け、ギュッと子宮を鷲づかみされた悦びが押し寄せてきます。 ショーツに忍び込んだ中指も、第二間接まで愛液に浸りながら、 はしたなく大きくなったクリトリスを無心に弄んでいます。
「ああっ、欲しい・・あ、あなたが欲しいのよぉ・・」
うわ言のように喘ぎながら、私は立ったまま体を硬直させていました。
ふらつく足取りでリビングに戻った私は、全身の力が抜けたようにソファへもたれ込みました。
(このままでは狂ってしまう・・)
私は怖くなりました。
まだ下腹部の奥が疼いています。
男は、年を取ってから色に狂うと身を持ち崩すと言います。 それは女も同じでしょう。 いえ、今は女の方が危ないかもしれません。
今夜は清川君が家へ遊びに来ます。
私はソファに座ったまま、あの夜以来となる清川君に、どう接したらいいのか思い悩んでいました。
つづく・・・
ランキングに参加しています ご協力おねがいします
Access Maniax BlogPeople「恋愛・セックス/大人の話」ブログランキング