『喝采』・・・第十三章
『喝 采』 ・・・作品紹介・・・
「ママさん社長」として世間の喝采を浴びる美咲。
だが実態は、大手企業を率いる御曹司に惹かれて愛人となり、夫と子供を裏切って手にした社長の地位だった。
順風満帆な美咲だが、頼りにしていた御曹司から会社への融資を断られ・・・
第十三章
さいたま市にある鉄道博物館。
言わずと知れた鉄道マニアの聖地だが、今や入場規制が行われるほど、幅広い見学者を集める観光スポットになっている。
蒸気機関車から新幹線まで、各時代の名車が三十六輌展示保存されているほか、運転シミュレーターや日本最大の模型鉄道ジオラマもある。
初めて不思議な空間に足を踏み入れた美咲は、くらくらと目眩に近い途惑いを感じた。
「凄いだろう、大志。これは特急『あいづ』のクモハ481。こっちは中央線仕様でオレンジ色のクモハ101だ!」
隣を歩く夫の三浦弘明が、興奮した表情で幼稚園年中組の大志に指差して説明する。大志はやや怯えた顔をして、いつもは大人しい父親の変貌ぶりをポカンと見上げた。
十二月の休日、美咲はたまの休みが取れ、家族で鉄道博物館へ遊びに来ていた。
むろん弘明の提案である。
弘明は筋金入りの鉄道好きで、本人が語るところでは、『撮り鉄』と分類される写真撮影を重視するマニアらしい。
本人は何度も一人で訪れているらしいが、美咲と大志を連れてくるのは初めてだった。
弘明は大志の手を引いて博物館を所狭しと歩き回った。
「大志、あれが蒸気機関車のC57だ。かっこいいだろう」
何が楽しいのか、鉄道音痴の美咲にはまったくわからなかった。
ただ家庭サービスと割り切って、呆れながら夫と子供の後をついて見学した。
弘明は三十九歳、以前美咲もいた大手食品会社で、今も業務管理部の係長を勤めている。
特に仕事ができるわけでもなく、取り立てて何の取り柄もない平凡なサラリーマンだった。
社交的で活発な美咲とは正反対に、普段は家に閉じこもって、撮り溜めた鉄道写真を整理するのを楽しみにしていた。
つづく・・・
『不如帰~永遠の嘘』『色褪せぬ薔薇』 携帯小説サイト配信情報
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「ママさん社長」として世間の喝采を浴びる美咲。
だが実態は、大手企業を率いる御曹司に惹かれて愛人となり、夫と子供を裏切って手にした社長の地位だった。
順風満帆な美咲だが、頼りにしていた御曹司から会社への融資を断られ・・・
第十三章
さいたま市にある鉄道博物館。
言わずと知れた鉄道マニアの聖地だが、今や入場規制が行われるほど、幅広い見学者を集める観光スポットになっている。
蒸気機関車から新幹線まで、各時代の名車が三十六輌展示保存されているほか、運転シミュレーターや日本最大の模型鉄道ジオラマもある。
初めて不思議な空間に足を踏み入れた美咲は、くらくらと目眩に近い途惑いを感じた。
「凄いだろう、大志。これは特急『あいづ』のクモハ481。こっちは中央線仕様でオレンジ色のクモハ101だ!」
隣を歩く夫の三浦弘明が、興奮した表情で幼稚園年中組の大志に指差して説明する。大志はやや怯えた顔をして、いつもは大人しい父親の変貌ぶりをポカンと見上げた。
十二月の休日、美咲はたまの休みが取れ、家族で鉄道博物館へ遊びに来ていた。
むろん弘明の提案である。
弘明は筋金入りの鉄道好きで、本人が語るところでは、『撮り鉄』と分類される写真撮影を重視するマニアらしい。
本人は何度も一人で訪れているらしいが、美咲と大志を連れてくるのは初めてだった。
弘明は大志の手を引いて博物館を所狭しと歩き回った。
「大志、あれが蒸気機関車のC57だ。かっこいいだろう」
何が楽しいのか、鉄道音痴の美咲にはまったくわからなかった。
ただ家庭サービスと割り切って、呆れながら夫と子供の後をついて見学した。
弘明は三十九歳、以前美咲もいた大手食品会社で、今も業務管理部の係長を勤めている。
特に仕事ができるわけでもなく、取り立てて何の取り柄もない平凡なサラリーマンだった。
社交的で活発な美咲とは正反対に、普段は家に閉じこもって、撮り溜めた鉄道写真を整理するのを楽しみにしていた。
つづく・・・
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