紅殻島(べんがらじま)・・・第二十九章
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『 紅 殻 島 』
二十九
英生は海外出張だと偽って、雛子に芝居をさせて伊勢を呼び寄せた。
そして二人が愛し合う様を、英生は嬉しそうに眺めていたのだ。
「あ、兄貴は・・知っていたのか・・」
「でも伊勢さんを呼んだのは、たぶんあの人が自分の余命を知ってからだわ」
肺癌に侵されていることを知った英生は、見知らぬ男を物色するのは止めて、伊勢だけに雛子を任せるようになった。
「雛子を頼む」
英生は伊勢の想いを知っていたのだ。
そして自分が逝った後を考えて、雛子の将来を伊勢に託そうとしたのだろう。
伊勢はがっくりと項垂れた。
「あ、兄貴はそこまで・・」
「そういう人だったわ。優しくて、飾ることがなくて、心の大きな人だった」
雛子と伊勢は、再び沈黙したまま、壁で微笑む英生を長い時間見つめていた。
伊勢はふうっと大きなため息を漏らした。
「ライバルが亡き兄貴の思い出が相手じゃ、僕など足許にも及ばないよ・・」
「伊勢さん」
「兄貴は罪な男だよ・・でも雛ちゃんがそこまで覚悟した上なら、もう僕には出る幕もないな・・」
つづく・・・
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