紅殻島(べんがらじま)・・・第二十六章
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『 紅 殻 島 』
二十六
短かった英生との生活だったが、その毎日毎日、一場面一場面、一言一言が、下衆な男に犯されて鮮やかに蘇ってくる。
(あなた・・)
網膜の中の英生は、他に何もない島だけに、雛子の瞳の奥で何倍にも目映く感じられた。
雛子は恥ずかしそうに笑った。
「この島で男に抱かれていると、あの人が近くにいてくれるみたいなの。まるで生き返ったように、あの人が楽しそうに話しかけてきてくれるのよ」
伊勢は愕然とした。
「兄貴を愛し続けるために、この島で売春をしていると言うのか・・」
「あの人との五年間の愛情は、私が一生をかけても埋められないほど大きかったの」
そのはにかんだ表情は、年頃の生娘のように初々しかった。
伊勢はテーブルを両手で叩いた。
「う、嘘だ。兄貴との夫婦生活は、破綻していたんじゃなかったのか? それなら一体、僕らの関係は・・」
テーブルの上に置かれた宝石箱が転がり落ちた。
「・・あの人は、私達のことを知っていたのよ」
「ええっ?」
「ううん、あの人は亡くなる前に、私を伊勢さんに託したかったのかもしれない」
雛子は瞳を伏せて、英生との結婚の経緯を語り始めた。
そもそもエリートの英生が、三十代半ば過ぎまで独身だったのには理由があった。
世間から許されない性癖を持っていた。
初めてベッドを共にした時、英生は包み隠さず告白した。
つづく・・・
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