紅殻島(べんがらじま)・・・第二十五章
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『 紅 殻 島 』
二十五
雛子は胸が熱くなった。
「伊勢さん・・」
売春婦になった雛子は、裸に剥かれることはあっても、隠してもらえることなどここへ来て一度もなかった。
「嬉しいわ・・でも私は島からは出られないの・・」
「どうして? もう兄貴への償いは十分したはずだよ。早くこの島を出て僕と人生をやり直そう」
伊勢が両手で雛子の肩を抱いた。
雛子は首を振った。
「違うの・・」
雛子は瞳を潤ませながら、壁で微笑む英生を見つめた。
「私が愛した男はあの人だけ・・もう抜け殻なの・・女であることを、私は、あの人とともに葬ってしまったから・・」
「そ、そんな・・」
「あの人との思い出に包まれながら、この島でひっそりと死にたいの・・」
青白い蛍光灯の下、雛子は寂しそうな瞳を伊勢へ向けた。
男は売春婦を蔑視する。
だが売春婦も、心の底では客の男を馬鹿にしている。
政治家も大学教授もお寺の坊さんも、離れ小島で遊女を抱く時は、昼間の仮面を投げ捨てて本能を剥き出しにする。
紳士面した男が縛らせろと強要したり、逞しい髭面の男が虐めてくれと哀願したりする。
性癖だけでなく、普段隠している傲慢さや狭量さ、狡猾さを、男達は売春婦と侮って平気で曝け出してくる。
雛子はそんな男達に抱かれると、逆に英生の大きさを改めて感じることができた。
毎晩男に犯されるたび、雛子は英生の愛情に包まれることができるのだった。
つづく・・・
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