紅殻島(べんがらじま)・・・第十五章
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『 紅 殻 島 』
十五
雛子はノーブラだった。
白いTシャツの生地に、小さな突起が二つ浮き出している。
「あ、あの雛ちゃん・・僕は、そろそろ・・」
「ダメよ。か弱い女を独りぼっちにするつもりなの?」
雛子は立ち上がった伊勢の腕をつかむと、胸元で抱きかかえるようにして再びソファへ座らせた。
「し、しかし・・」
躊躇う伊勢の腕に乳房を押し当て、雛子は哀願するようにじっと顔を覗き込んだ。
昔の雛子が得意にしていた科だった。
伊勢はごくっと生唾を呑み込んだ。
一度は雛子のことを諦めた。
雛子を愛すればこそ、英生を敬愛すればこそ、伊勢は己の我がままを石棺に封じ込めたのだ。
エリートと場末のホステス。
だがシンデレラ・ストーリーは、所詮英生の気まぐれだったのかもしれない。
ドブ川の河原に捨てられた子犬を、可哀想だと拾うような感覚だったのかもしれない。
スナック時代を思わせる雛子の媚態は、英生の愛情がすっかり遠退いてしまったことを物語っていた。
揺れる伊勢の心を知ってか知らずか、雛子は男の理性を決壊させる楔を打ち込んだ。
「・・寂しいのよ」
憂いに潤んだ瞳と腕に伝わる柔らかな肉感が、封じ込めてきた伊勢のたぎる血を逆流させた。
つづく・・・
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