紅殻島(べんがらじま)・・・第十六章
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『 紅 殻 島 』
十六
伊勢は雛子を抱きしめた。
雛子は悪戯っぽい瞳を伏せただけで、伊勢の腕の中で抗おうともしなかった。
「ひ、雛ちゃん・・」
そのしなやかな肢体を掌中にした伊勢は、やっとのことでその名を上ずった声で呟いた。
テレビ台の脇に飾られた結婚式での写真が、雛子の肩越しに見える。
(・・兄貴)
子供の頃から、伊勢は英生の後ろをついて歩いていた。
「伊勢、俺はもう野球に飽きたから、お前が代わりにピッチャーやれ」
「伊勢、俺はもう切手集めなんか飽きたから、コレクションを全部お前にやるよ」
天才肌だった英生は、何事にも好奇心旺盛だったが、同時に醒めやすく、すぐに投げ出してしまう性格だった。
スポーツでも趣味でも、いつもその後事を託されるのは伊勢だった。
(雛ちゃんも・・なのか)
英生を幼い頃から知る伊勢は、愛情が醒めた雛子を託されたのかと直感した。
洞察力が深い英生のことだ。
雛子に未練が残る伊勢の心中まで見透かしているのかもしれない。
いくら英生でもそれは許されない。
だが腕の中にいる雛子を想うと、英生の策略だとわかっていても、見捨ててこのまま帰るにはいかなかった。
つづく・・・
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