紅殻島(べんがらじま)・・・(第十一章)
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『 紅 殻 島 』
十一
八年前、渡瀬英生と高野雛子は結婚した。
だがその結婚生活は五年で潰えた。
四十三歳の若さで、英生が肺癌により早世したからだった。
水商売の自出が理由で、英生の親族から絶縁状態にあった雛子は、行き先も告げず姿を消した。
伊勢は雛子を三年間探し続けた。
そして仲の良かったスナックの友人から、やっと雛子の消息を聞き当てたのだった。
紅殻島の売春婦。
伊勢は耳を疑った。
四十歳近くまで独身貴族だった英生は、マンションとかなりの金を残しているはずだった。
売春婦に身を落とさずとも、昼間の仕事だけで衣食住には困らないだろう。
また三十代半ばの美貌からすれば、いくらでも再婚相手がいたに違いない。
だが雛子は苦界に身を沈めた。
何故?
初めて私事都合で会社を休んだ伊勢は、荷造りもそこそこに列車へ乗り込んだ。
長い時間列車とバスを乗り継ぎ、人家も疎らな対岸から紅殻島を眺めた時、伊勢ははっとあることに気づいた。
紅殻島は海に閉ざされた牢獄だった。
昔、島へ送られた女達は、自由に外へ出ることが許されなかった。
島抜けして溺れ死んだ女もいると聞く。
今はそんな非道などないだろうが、島を出たところで、森林と田畑ばかりで遊ぶところもなかった。
伊勢は紅殻島へ来て初めて、雛子が身を落とした心情を察することができた。
(償いか・・)
財産を投げ捨て、自ら牢獄に身をつなぐことで、雛子は英生への罪を贖おうとしているのだ。
そしてその罪は、伊勢にとっても他人事ではなかった。
共犯者。
二人が犯してしまった過ち。
伊勢は船着場で暗い海を眺めながら、煙草にぽつんと赤い火を点した。
あの日・・・
つづく・・・
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