紅殻島(べんがらじま)・・・(第十章)
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『 紅 殻 島 』
十・
墨を流したような漆黒の海が、夜空との境もなく、天地から紅殻島を圧し包んでくる。
暗夜の星にも似た島は、欲望の輝きを無限の闇に発光させている。
独り旅館で食事を終えた伊勢俊夫は、時間つぶしに島の散策へ出た。
(何もない島だ)
船着場を囲んでホテルと旅館が五軒建つ他は、島民の生活を支えるよろず屋が一軒あるだけだった。
後は売春斡旋所と思われるスナックが五軒、原色の妖しい看板を誘蛾灯のように掲げている。
その海岸沿いの狭い平地から、島の大半を占める丘陵の斜面へは、人が一人通れる狭い路地に、安普請のアパートが蟻塚のように軒を連ねていた。
売春婦達の棲家である。
旅館の中居から聞いた話では、紅殻島での商売は彼女達の部屋で行われるらしい。
明かりが灯る窓には、ピンク色のカーテンが生々しく映っていた。
伊勢は深いため息をついた。
雛子は今、ホテルの宴会にピンクコンパニオンとして呼ばれている。
仕事が終わってから、伊勢は彼女のアパートで逢う約束を取りつけていた。
(何故、彼女はこの島にいるのか?)
夜風に漂う泥酔した客と売春婦の嬌声が、伊勢の憂鬱をいっそう重々しくした。
つづく・・・
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