「紅殻島」・・・(第三章)
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『 紅 殻 島 』
三.
島へ流れてきて三年、雛子は今年三十八歳になっていた。
最近では外国籍の女が増え、その若さを求めて島へ渡る男も増えている。
「あと何年この島にいられるのかしら・・」
人より優れた容色も、目尻の小皺から始まる年波には勝てない。
容姿の衰えにもまして、雛子の心は、すでに白い灰のように熱い鼓動を失っていた。
雛子は哀しげな笑みを口許に浮かべると、夜の闇が広がり始めた対岸へ目を遣った。
小さな渡船が紅殻島へ向かってくる。
旧式のエンジン音を止めて渡船が岸壁に着くと、どやどやと十数人のサラリーマンが降りてきた。
「この島は男の楽園らしいぞ」
「明日のゴルフを前に腰を痛めるなよ」
下卑た男達の会話を聞きながら、雛子は自分のアパートへ戻ろうした。
「雛ちゃん!」
不意に背後で男が雛子の名を呼んだ。
その男の声には聞き覚えがあった。
「・・い、伊勢さん?」
サラリーマンの後から降りてきた男に、驚いた雛子は目を丸くした。
伊勢と呼ばれた男は、雛子の許へ走り寄ると、興奮した表情で細い腕をつかんだ。
「・・探したんだよ」
雛子は伊勢から顔をそむけた。
防波堤の突端にある灯台が、暮れなずむ空にぽつんと赤い光を点していた。
つづく・・・
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