「男の居場所」 第七章・・・(紅殻格子)
※ 小説を読まれる方へ・・・
更新記事は新着順に表示されますので小説を最初から順追って
お読みになりたい方は、左のカテゴリー(各小説)を選択していただければ
第一章からお読みいただけるようになっております
「男の居場所」
七・
それは家族とて同様だ。
福岡の転勤が決まるや、本人の意向などお構いなしに、家族は水上の単身赴任の準備を始めた。
高校に通う娘と息子がいれば、世間的には当然なのかもしれない。
無論、水上自身も内心は自分が犠牲になることを覚悟していた。
しかし単身赴任するのはあくまでも水上の家族愛であり、欠席裁判で勝手に命じられるものではない。
父親のありがたみがわからない子供たちは、むしろ煩い父親が居なくなることを喜んだに違いない。
それは仕事仕事で育児をかまけた負い目から、水上も期待するのは半ば諦めていた。
しかし妻が水上の福岡転勤を聞いた瞬間、ほっと安堵したような表情を見せたのには落胆した。
案の定、単身赴任当初は頻繁にかかって来た電話も、今はほとんど途絶えている。
若い恋人たちの遠距離恋愛は難しいと言うが、熟年ともなればそれ以上かも知れない。
単身赴任者は、月二回家に戻れる旅費が会社から支給される。
水上の場合、月二往復分の福岡・東京の航空運賃が、手当てとして給与に加算される。
しかし今はせいぜい二ヶ月に一度くらいしか家に戻っていなかった。
それには理由があった。
水上家のリビングに置かれたソファには、暗黙で決められた家族の定位置がある。
テレビが一番見えやすい場所が、一家の大黒柱である父親の定席だ。
ところが単身赴任して一ヶ月も経つと、その場所は息子に占領されていた。
しかも誰もそれを咎めることなく、本人も父親が帰ってきたのに譲ろうともしない。
些細なことだと笑われるかもしれないが、些細なことだけにショックを受けた。
すっかり水上の存在は、家族から忘れられていたのだ。
水上が家の戻らなくても、給与が銀行口座に振り込まれている限り、妻や子供は何も不自由することはない。
水上は単身赴任して初めて、家でもその居場所を失っていたことに気づいた。
開けっ放しにした浴室からの音で、バスタブの湯が満たされたのを水上は知った。
着信音の鳴らない携帯電話を枕元に置くと、クリーニングに出すワイシャツと、コインランドリーで洗濯する下着をビニール袋に分け、まだ暖まりきらない部屋の寒さに背を丸めて浴室に駆け込んだ。
つづく・・・
・・・・・・ お知らせ ・・・・・
『色褪せぬ薔薇』携帯小説サイトにて配信中です。
『色褪せぬ薔薇』 作品紹介・・・・(電子書籍「遊スタ」より引用)
※ 来年60歳になる秀明は住宅用建材メーカーの重役で、25年前は仙台支社にて営業をしていた。単身赴任で仙台にやってきた秀明は、やがて同僚の葉子と社内不倫の関係を持つようになり、夜毎、互いに体を貪り合い、熱い情事を繰り返した。 だが、秀明が東京の本社へと戻ったことをきっかけに、ふたりは別れ離れになってしまう。 久しぶりに、仙台を訪れた秀明は、彼女に会うことにするが、そこで部下から知らされた葉子の衝撃的な事実とは?
愛に包まれた感動のエピローグに乞うご期待!※
閲覧方法・・・
「どこでも読書」
「どこでも読書」TOP上段にあります総合検索にて「小説」→ジャンル「ハードロマン」↓「色褪せぬ薔薇」と検索いただくか?もしくは著者名にて「降矢木士朗」(ふりやぎしろう)と検索いただければご覧頂けます。
電子書籍「遊スタ」←携帯電話でご覧頂いている方は、そのままクリックでお入りいだだけます。
パソコンでご覧頂いている方には、大変、申し訳ありませんが電子書籍「遊スタ」は携帯電話からでないと入れません。
お手数ですが携帯電話にて「遊スタ」→カテゴリ「官能小説」→「色褪せぬ薔薇」と検索してください。
[妄想の囲炉裏端]~掲示板~
~にほんブログ村 恋愛小説~(愛欲)
~FC2 人妻・熟女官能~
~愛と官能の美学~
~女たちの性書~
~人気ブログランキング 愛と性~
BlogPeople「芸術・文学/読書中毒」
BlogPeople「恋愛・セックス/大人の話」
エッチな告白体験談ブログ
読み物交差点
更新記事は新着順に表示されますので小説を最初から順追って
お読みになりたい方は、左のカテゴリー(各小説)を選択していただければ
第一章からお読みいただけるようになっております
「男の居場所」
七・
それは家族とて同様だ。
福岡の転勤が決まるや、本人の意向などお構いなしに、家族は水上の単身赴任の準備を始めた。
高校に通う娘と息子がいれば、世間的には当然なのかもしれない。
無論、水上自身も内心は自分が犠牲になることを覚悟していた。
しかし単身赴任するのはあくまでも水上の家族愛であり、欠席裁判で勝手に命じられるものではない。
父親のありがたみがわからない子供たちは、むしろ煩い父親が居なくなることを喜んだに違いない。
それは仕事仕事で育児をかまけた負い目から、水上も期待するのは半ば諦めていた。
しかし妻が水上の福岡転勤を聞いた瞬間、ほっと安堵したような表情を見せたのには落胆した。
案の定、単身赴任当初は頻繁にかかって来た電話も、今はほとんど途絶えている。
若い恋人たちの遠距離恋愛は難しいと言うが、熟年ともなればそれ以上かも知れない。
単身赴任者は、月二回家に戻れる旅費が会社から支給される。
水上の場合、月二往復分の福岡・東京の航空運賃が、手当てとして給与に加算される。
しかし今はせいぜい二ヶ月に一度くらいしか家に戻っていなかった。
それには理由があった。
水上家のリビングに置かれたソファには、暗黙で決められた家族の定位置がある。
テレビが一番見えやすい場所が、一家の大黒柱である父親の定席だ。
ところが単身赴任して一ヶ月も経つと、その場所は息子に占領されていた。
しかも誰もそれを咎めることなく、本人も父親が帰ってきたのに譲ろうともしない。
些細なことだと笑われるかもしれないが、些細なことだけにショックを受けた。
すっかり水上の存在は、家族から忘れられていたのだ。
水上が家の戻らなくても、給与が銀行口座に振り込まれている限り、妻や子供は何も不自由することはない。
水上は単身赴任して初めて、家でもその居場所を失っていたことに気づいた。
開けっ放しにした浴室からの音で、バスタブの湯が満たされたのを水上は知った。
着信音の鳴らない携帯電話を枕元に置くと、クリーニングに出すワイシャツと、コインランドリーで洗濯する下着をビニール袋に分け、まだ暖まりきらない部屋の寒さに背を丸めて浴室に駆け込んだ。
つづく・・・
・・・・・・ お知らせ ・・・・・
『色褪せぬ薔薇』携帯小説サイトにて配信中です。
『色褪せぬ薔薇』 作品紹介・・・・(電子書籍「遊スタ」より引用)
※ 来年60歳になる秀明は住宅用建材メーカーの重役で、25年前は仙台支社にて営業をしていた。単身赴任で仙台にやってきた秀明は、やがて同僚の葉子と社内不倫の関係を持つようになり、夜毎、互いに体を貪り合い、熱い情事を繰り返した。 だが、秀明が東京の本社へと戻ったことをきっかけに、ふたりは別れ離れになってしまう。 久しぶりに、仙台を訪れた秀明は、彼女に会うことにするが、そこで部下から知らされた葉子の衝撃的な事実とは?
愛に包まれた感動のエピローグに乞うご期待!※
閲覧方法・・・
「どこでも読書」
「どこでも読書」TOP上段にあります総合検索にて「小説」→ジャンル「ハードロマン」↓「色褪せぬ薔薇」と検索いただくか?もしくは著者名にて「降矢木士朗」(ふりやぎしろう)と検索いただければご覧頂けます。
電子書籍「遊スタ」←携帯電話でご覧頂いている方は、そのままクリックでお入りいだだけます。
パソコンでご覧頂いている方には、大変、申し訳ありませんが電子書籍「遊スタ」は携帯電話からでないと入れません。
お手数ですが携帯電話にて「遊スタ」→カテゴリ「官能小説」→「色褪せぬ薔薇」と検索してください。
[妄想の囲炉裏端]~掲示板~
~にほんブログ村 恋愛小説~(愛欲)
~FC2 人妻・熟女官能~
~愛と官能の美学~
~女たちの性書~
~人気ブログランキング 愛と性~
BlogPeople「芸術・文学/読書中毒」
BlogPeople「恋愛・セックス/大人の話」
エッチな告白体験談ブログ
読み物交差点