「男の居場所」 第六章・・・(紅殻格子)
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「男の居場所」
六・
福岡の冬は厳しい。
玄界灘からの寒風が夜の深閑とした住宅街の路地にまで吹き荒ぶ。
水上はコートの襟を立て、近所のコンビニへ向かった。
明日の朝食用のおにぎりとペットボトルのお茶を買うためだ。
単身赴任者にとってコンビニは、なくてはならない補給基地だ。
転勤当初は同僚を食事に誘ったり、自分で簡単な食事を作ってみたりもした。
しかし最近では、接待のない夜はほとんどコンビニの弁当で済ませている。
一見侘しくも思えるが、経済的にも体力的にもそれが一番楽だった。
水上はコンビニを出ると、袋をガサガサ木枯らしに鳴らせながらアパートへ帰った。
プレハブの安普請なドアを開けると、閉め切った部屋のすえた臭いが鼻をつく。
暗闇の中、水上は手探りで電灯のスイッチを入れた。
安っぽい蛍光灯の青白い光が、がらんとした部屋を一層殺風景に見せた。
家財道具は、小さなテレビと冷蔵庫、ファンヒーター、クローゼット・ハンガーぐらいしか見当たらない。
部屋の中央に敷かれた万年床の周りには、ビールの空き缶や乾き物の袋、新聞、週刊誌が散乱している。
また台所の流しにはカップラーメンの容器が、洗面台の下には洗濯物が、無造作に山積みされたままになっている。
部屋は外の気温と変わらぬほど冷え切っていた。
水上はスイッチを入れたファンヒーターの前にうずくまり、コートを着たまま部屋が暖まるのを待った。
実際はほんの数分なのだが、侘しい単身赴任の身には実に長い時間に感じられる。
しばらくして部屋が暖まると、水上は風呂場へ浴槽に湯を張りに行った。
入居した当時は綺麗なユニット・バスだったが、不精でほとんど掃除もしないため、天井や壁には黒いカビが点々と生え、浴槽は垢がこびりついてザラザラとしている。
夜十一時のニュースを見ながら、水上はため息をついた。
五十に手が届く年で修行僧並の苦行は正直辛い。
今夜は一層その思いが強かった。
単身赴任の苦しみは会社しか癒せない。
仕事さえ充実していれば、生活の苦行など取るに足らないことだ。
しかし会社で居場所を失った今の水上には、単身生活を癒してくれる楽しみなど皆無に近かった。
つづく・・・
・・・・・・ お知らせ ・・・・・
『色褪せぬ薔薇』携帯小説サイトにて配信中です。
『色褪せぬ薔薇』 作品紹介・・・・(電子書籍「遊スタ」より引用)
※ 来年60歳になる秀明は住宅用建材メーカーの重役で、25年前は仙台支社にて営業をしていた。単身赴任で仙台にやってきた秀明は、やがて同僚の葉子と社内不倫の関係を持つようになり、夜毎、互いに体を貪り合い、熱い情事を繰り返した。 だが、秀明が東京の本社へと戻ったことをきっかけに、ふたりは別れ離れになってしまう。 久しぶりに、仙台を訪れた秀明は、彼女に会うことにするが、そこで部下から知らされた葉子の衝撃的な事実とは?
愛に包まれた感動のエピローグに乞うご期待!※
閲覧方法・・・
「どこでも読書」
「どこでも読書」TOP上段にあります総合検索にて「小説」→ジャンル「ハードロマン」↓「色褪せぬ薔薇」と検索いただくか?もしくは著者名にて「降矢木士朗」(ふりやぎしろう)と検索いただければご覧頂けます。
電子書籍「遊スタ」←携帯電話でご覧頂いている方は、そのままクリックでお入りいだだけます。
パソコンでご覧頂いている方には、大変、申し訳ありませんが電子書籍「遊スタ」は携帯電話からでないと入れません。
お手数ですが携帯電話にて「遊スタ」→カテゴリ「官能小説」→「色褪せぬ薔薇」と検索してください。
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部屋の中央に敷かれた万年床の周りには、ビールの空き缶や乾き物の袋、新聞、週刊誌が散乱している。
また台所の流しにはカップラーメンの容器が、洗面台の下には洗濯物が、無造作に山積みされたままになっている。
部屋は外の気温と変わらぬほど冷え切っていた。
水上はスイッチを入れたファンヒーターの前にうずくまり、コートを着たまま部屋が暖まるのを待った。
実際はほんの数分なのだが、侘しい単身赴任の身には実に長い時間に感じられる。
しばらくして部屋が暖まると、水上は風呂場へ浴槽に湯を張りに行った。
入居した当時は綺麗なユニット・バスだったが、不精でほとんど掃除もしないため、天井や壁には黒いカビが点々と生え、浴槽は垢がこびりついてザラザラとしている。
夜十一時のニュースを見ながら、水上はため息をついた。
五十に手が届く年で修行僧並の苦行は正直辛い。
今夜は一層その思いが強かった。
単身赴任の苦しみは会社しか癒せない。
仕事さえ充実していれば、生活の苦行など取るに足らないことだ。
しかし会社で居場所を失った今の水上には、単身生活を癒してくれる楽しみなど皆無に近かった。
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『色褪せぬ薔薇』 作品紹介・・・・(電子書籍「遊スタ」より引用)
※ 来年60歳になる秀明は住宅用建材メーカーの重役で、25年前は仙台支社にて営業をしていた。単身赴任で仙台にやってきた秀明は、やがて同僚の葉子と社内不倫の関係を持つようになり、夜毎、互いに体を貪り合い、熱い情事を繰り返した。 だが、秀明が東京の本社へと戻ったことをきっかけに、ふたりは別れ離れになってしまう。 久しぶりに、仙台を訪れた秀明は、彼女に会うことにするが、そこで部下から知らされた葉子の衝撃的な事実とは?
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