「肉形見」 第四章・・・(紅殻格子)
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「肉形見」
四.
兄嫁の由紀だった。
「義姉さん、ご無沙汰しています」
「こちらこそ。さあ、お義父さんとお義母さんが首を長くしてお待ちですよ。
寒いから早く車に乗って」
由紀は武彦の荷物をトランクに入れると、車のエンジンをかけた。
武彦の実家は湯女川駅から車で十五分ほど離れた山中にある。
車は駅前を離れ、小さな渓流沿いに狭い山坂を登っていく。
由紀は教習所で教える通り、ハンドルを両手で力一杯握り締め、
山蔭の凍結した路面を避けながらのろのろ走った。
「ごめんなさいね。運転が下手で・・・」
由紀はフロントガラスを凝視しながら、武彦に何度も侘びた。
武彦は由紀を横目で見た。
紺の綿入れを羽織り、地味なこげ茶色のズボンを穿いた由紀は、
とても三十三歳とは思えない地味な出で立ちをしていた。
東京のオフィス街を闊歩する同年代のOLと比べると、
その野暮ったさは滑稽なほどだった。
ただ武彦はそんな兄嫁を敬愛していた。
由紀の夫である武彦の兄の智彦は、一昨年、三十六歳の若さで鬼籍に入った。
死因は癌だった。
二人は十年間生活を共にしたが、子供には恵まれなかった。
智彦が逝ってから由紀には再婚話もあったらしい。
しかし由紀は智彦のいない平尾家で、今も泰治と絹江の世話をしてくれている。
二人兄弟の武彦は、兄亡き今、本来なら平尾家を継ぐべき立場にある。
だが武彦が両親の面倒も見ず、気ままに東京で暮らせるのは、
全て由紀のお陰に他ならなかった。
つづく・・・
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由紀は武彦の荷物をトランクに入れると、車のエンジンをかけた。
武彦の実家は湯女川駅から車で十五分ほど離れた山中にある。
車は駅前を離れ、小さな渓流沿いに狭い山坂を登っていく。
由紀は教習所で教える通り、ハンドルを両手で力一杯握り締め、
山蔭の凍結した路面を避けながらのろのろ走った。
「ごめんなさいね。運転が下手で・・・」
由紀はフロントガラスを凝視しながら、武彦に何度も侘びた。
武彦は由紀を横目で見た。
紺の綿入れを羽織り、地味なこげ茶色のズボンを穿いた由紀は、
とても三十三歳とは思えない地味な出で立ちをしていた。
東京のオフィス街を闊歩する同年代のOLと比べると、
その野暮ったさは滑稽なほどだった。
ただ武彦はそんな兄嫁を敬愛していた。
由紀の夫である武彦の兄の智彦は、一昨年、三十六歳の若さで鬼籍に入った。
死因は癌だった。
二人は十年間生活を共にしたが、子供には恵まれなかった。
智彦が逝ってから由紀には再婚話もあったらしい。
しかし由紀は智彦のいない平尾家で、今も泰治と絹江の世話をしてくれている。
二人兄弟の武彦は、兄亡き今、本来なら平尾家を継ぐべき立場にある。
だが武彦が両親の面倒も見ず、気ままに東京で暮らせるのは、
全て由紀のお陰に他ならなかった。
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