「肉形見」 第九章・・・(紅殻格子)
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「肉形見」
九.
武彦が合掌を終えると、由紀が墓前に額ずいた。
由紀は黒髪を無造作に束ね、化粧をすることも忘れてしまっていた。
しかし色白の瓜見顔と柳眉、二重瞼を彩る長い睫、
整った小さな口唇は、化粧などしなくても十分美しかった。
じっと手を合わせて瞑目する由紀の横顔は、
未亡人の愁いを湛えながらも、墓石を兄に見立てて甘えるようにも見えた。
由紀は二十四歳で智彦に嫁いだ。
隣村の農家の出身で、役場の職員として働いていた。
由紀は近郷でも評判の美人で、若者たちの人気は高かったらしい。
智彦は村の若者同士の交流で由紀を見初め、
並み居るライバルを蹴落として娶った。
智彦の審美眼は正しかった。
男にもてはやされる女は得てして天狗になりやすい。
しかし由紀は違っていた。
厳格な家庭に育ったせいか、万事控えめで辛抱強かった。
辛い農作業も苦にせず、舅姑によく仕えた。
智彦との夫婦仲も傍目が羨むほど睦まじかった。
だが人生の伴侶は早世した。
智彦との思い出だけに縋って残された人生を送るには、
由紀は余りにも若過ぎた。しかも子供はない。
女盛りの由紀に再婚の意思があれば、引く手数多に違いない。
その由紀が、亡き夫に操を立て、舅姑に義理を立て、
平尾の家に骨を埋める気でいるのが武彦には忍びなかった。
(どうして義姉さんは・・)
武彦には由紀の心中が読めなかった。
別に泰治と絹江が引き止めているわけではない。
現に智彦の一周忌に、泰治は早く再婚する相手を探すよう由紀を説得した。
だが由紀は実家に帰る素振りも見せず、
第二の人生を始める気配も見せなかった。
つづく・・・
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整った小さな口唇は、化粧などしなくても十分美しかった。
じっと手を合わせて瞑目する由紀の横顔は、
未亡人の愁いを湛えながらも、墓石を兄に見立てて甘えるようにも見えた。
由紀は二十四歳で智彦に嫁いだ。
隣村の農家の出身で、役場の職員として働いていた。
由紀は近郷でも評判の美人で、若者たちの人気は高かったらしい。
智彦は村の若者同士の交流で由紀を見初め、
並み居るライバルを蹴落として娶った。
智彦の審美眼は正しかった。
男にもてはやされる女は得てして天狗になりやすい。
しかし由紀は違っていた。
厳格な家庭に育ったせいか、万事控えめで辛抱強かった。
辛い農作業も苦にせず、舅姑によく仕えた。
智彦との夫婦仲も傍目が羨むほど睦まじかった。
だが人生の伴侶は早世した。
智彦との思い出だけに縋って残された人生を送るには、
由紀は余りにも若過ぎた。しかも子供はない。
女盛りの由紀に再婚の意思があれば、引く手数多に違いない。
その由紀が、亡き夫に操を立て、舅姑に義理を立て、
平尾の家に骨を埋める気でいるのが武彦には忍びなかった。
(どうして義姉さんは・・)
武彦には由紀の心中が読めなかった。
別に泰治と絹江が引き止めているわけではない。
現に智彦の一周忌に、泰治は早く再婚する相手を探すよう由紀を説得した。
だが由紀は実家に帰る素振りも見せず、
第二の人生を始める気配も見せなかった。
つづく・・・
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