「それってセクハラ?」第一章・・・(紅殻格子)
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「それってセクハラ?」
一.
私ね、若い頃、新橋にある貿易会社に勤めていたのよ。
二十五歳ぐらいだったかな。
社員が十人ぐらいの小さな会社で、事務職の私を除けば、
周りは五十歳過ぎのオジサンばかりだったわ。
だから会社の看板娘・・これは死語かしら・・
マスコットガールとして、みんなから可愛がられていたのよ。
何で笑っているのよ?
本当だってば。
こう見えても昔は、純情アイドル路線でブイブイ言わしていたんだから。
もっとも就職した時にはすでに人妻だったんだけどね。
私、結婚したのが早かったのよ。
大学卒業した後、つきあっていた男と二十三歳で結婚しちゃったの。
相手は三十歳の商社マン。
彼、九州出身で、古風な亭主関白タイプだったから、
結婚後しばらくは大人しく専業主婦をしていたの。
でも性格なのかな・・仕事一筋の主人が構ってくれなかったからかな・・
独りで家庭にこもっているのが辛くて、
その貿易会社の面接試験をこっそり受けちゃったわけ。
もちろん主人は反対したわ。
でも子供ができるまでと言う条件つきで、
主人も不承不承だったけど許してくれたのよ。
初めて出た社会は新鮮だったわ。
事務は私だけだから、月末は忙しかったけど、
毎日すごく充実感に溢れていたなあ。
それに小さな会社でしょう。
家族みたいな一体感があったのね。
会社が引けると、よく新橋の立ち飲み屋とかへ連れて行ってもらったわ。
え、その頃から酒豪だったんですかって?
さっき言ったでしょう。
若い頃は純情アイドル路線で売っていたって。
日本酒で一升ぐらいしか飲めなかったわよ。
それだけ飲めれば十分だって?
うるさいわねえ。黙って私の話を聞きなさいよ。
入社して三ヶ月経った秋に社員旅行があったの。
一泊二日の仙台旅行。
家族みたいな会社だったから、私もすごく楽しみにしていたのよ。
行きの新幹線でのことだったわ。
女は私一人だったから、
ホステス代わりに社長だった鮫島龍三の隣に座らされたの。
「赤星さん、今日明日は無礼講だから、日頃のストレスを目一杯発散してくれよ」
五十代半ばの鮫島は、テカテカに頭が禿げ上がって、
お腹の出た相撲取りみたいな体形をしていたわ。
性格は豪放磊落でざっくばらんだったから、
わりと社員からは慕われていたの。
もちろん私も、よく飲みに連れて行ってもらっていたから、
優しいお父さんみたいに思っていたわ。
赤星? ああ、それは私の旧姓よ。
つづく・・・
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「それってセクハラ?」
一.
私ね、若い頃、新橋にある貿易会社に勤めていたのよ。
二十五歳ぐらいだったかな。
社員が十人ぐらいの小さな会社で、事務職の私を除けば、
周りは五十歳過ぎのオジサンばかりだったわ。
だから会社の看板娘・・これは死語かしら・・
マスコットガールとして、みんなから可愛がられていたのよ。
何で笑っているのよ?
本当だってば。
こう見えても昔は、純情アイドル路線でブイブイ言わしていたんだから。
もっとも就職した時にはすでに人妻だったんだけどね。
私、結婚したのが早かったのよ。
大学卒業した後、つきあっていた男と二十三歳で結婚しちゃったの。
相手は三十歳の商社マン。
彼、九州出身で、古風な亭主関白タイプだったから、
結婚後しばらくは大人しく専業主婦をしていたの。
でも性格なのかな・・仕事一筋の主人が構ってくれなかったからかな・・
独りで家庭にこもっているのが辛くて、
その貿易会社の面接試験をこっそり受けちゃったわけ。
もちろん主人は反対したわ。
でも子供ができるまでと言う条件つきで、
主人も不承不承だったけど許してくれたのよ。
初めて出た社会は新鮮だったわ。
事務は私だけだから、月末は忙しかったけど、
毎日すごく充実感に溢れていたなあ。
それに小さな会社でしょう。
家族みたいな一体感があったのね。
会社が引けると、よく新橋の立ち飲み屋とかへ連れて行ってもらったわ。
え、その頃から酒豪だったんですかって?
さっき言ったでしょう。
若い頃は純情アイドル路線で売っていたって。
日本酒で一升ぐらいしか飲めなかったわよ。
それだけ飲めれば十分だって?
うるさいわねえ。黙って私の話を聞きなさいよ。
入社して三ヶ月経った秋に社員旅行があったの。
一泊二日の仙台旅行。
家族みたいな会社だったから、私もすごく楽しみにしていたのよ。
行きの新幹線でのことだったわ。
女は私一人だったから、
ホステス代わりに社長だった鮫島龍三の隣に座らされたの。
「赤星さん、今日明日は無礼講だから、日頃のストレスを目一杯発散してくれよ」
五十代半ばの鮫島は、テカテカに頭が禿げ上がって、
お腹の出た相撲取りみたいな体形をしていたわ。
性格は豪放磊落でざっくばらんだったから、
わりと社員からは慕われていたの。
もちろん私も、よく飲みに連れて行ってもらっていたから、
優しいお父さんみたいに思っていたわ。
赤星? ああ、それは私の旧姓よ。
つづく・・・