「禁断の遺伝子」最終章・・・(紅殻格子)
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『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子
二十
翌朝。
昨日とは打って変わり、梅雨の合間の青空が広がっていた。
その空の色は、春先の霞がかった水色ではなく、
夏を感じさせる群青色に近い透明な青だった。
周一は縁側に腰かけてぼんやりと空を見つめた。
朝起きると鴻巣はいなかった。
まるで昨夜のことが夢だったかのように、跡形もなく鴻巣は消え去っていた。
だが夢ではない証拠に、どこを探しても孝蔵と静子の写真は残っていなかった。
それも今となってはどうでもいいことだった。
月絵がお茶を持ってきた。そして周一の隣にちょこんと腰かけた。
「どうした?」
周一の言葉に、しばらく月絵はもじもじと口ごもった。
昨日とまでは別人の月絵に、周一も新妻を迎えるような緊張を覚えた。
夫婦生活のやり直しだった。
たぶん愛人の玲子へ与える精液は、全て月絵に吸い取られることになるだろう。
月絵が小声で周一に囁いた。
「あなたの言う通り、この家を残しておきたいと思って・・」
「それがいい」
周一は口許を緩めながら、それ以上何も言わず広い庭を見渡した。
緑の若葉を伸ばした柿の古木が、青い空を独り占めするように茂っていた。
――閉幕――
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『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子
二十
翌朝。
昨日とは打って変わり、梅雨の合間の青空が広がっていた。
その空の色は、春先の霞がかった水色ではなく、
夏を感じさせる群青色に近い透明な青だった。
周一は縁側に腰かけてぼんやりと空を見つめた。
朝起きると鴻巣はいなかった。
まるで昨夜のことが夢だったかのように、跡形もなく鴻巣は消え去っていた。
だが夢ではない証拠に、どこを探しても孝蔵と静子の写真は残っていなかった。
それも今となってはどうでもいいことだった。
月絵がお茶を持ってきた。そして周一の隣にちょこんと腰かけた。
「どうした?」
周一の言葉に、しばらく月絵はもじもじと口ごもった。
昨日とまでは別人の月絵に、周一も新妻を迎えるような緊張を覚えた。
夫婦生活のやり直しだった。
たぶん愛人の玲子へ与える精液は、全て月絵に吸い取られることになるだろう。
月絵が小声で周一に囁いた。
「あなたの言う通り、この家を残しておきたいと思って・・」
「それがいい」
周一は口許を緩めながら、それ以上何も言わず広い庭を見渡した。
緑の若葉を伸ばした柿の古木が、青い空を独り占めするように茂っていた。
――閉幕――