「禁断の遺伝子」第十三章・・・(紅殻格子)
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『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子
十三・
月絵は処女だった。周一と出会うまで男を遠ざけてきたのだろう。
結婚したからには、周一と性を営む覚悟はできていたはずだ。
だが性を楽しむほどに心は癒されていなかった。
両親の行為を目の当たりにした月絵は、
体が性の喜びを感じたとしても、
それを押し殺さなければと自分を戒めてきたのだ。
鴻巣は呆然と佇む周一の肩を叩くと、写真の束を手に蔵を出て行こうとした。
「悪いがこの写真はもらって帰るよ。お嬢さんに宜しく伝えてくれ」
「か、帰るって?」
「ここへ来た目的は達した。孝蔵様にお別れもできたし、
写真を手に入れることもできたからね」
バスで来たと言ったのは嘘で、鴻巣は集落の外れに車を用意していた。
周一は鴻巣を呼びとめた。
「待って下さい。お願いがあります」
訝しがる鴻巣に、周一は結婚生活が破局を迎えていることを告げた。
原因である月絵の性への嫌悪が、
鴻巣から聞いた話と無縁でないことも説明した。
「そう言われても・・」
責任を感じているのか鴻巣は蔵の出口で躊躇した。
「助けてもらいたいんです」
周一は咄嗟に浮かんだシナリオを鴻巣に耳打ちした。
「そ、それは、いくらなんでも危険だ・・」
「一か八かのショック療法です。このまま手を下さなくても、
私達の夫婦生活は決して元には戻らないのですから」
鴻巣は腕組みしたまま唸った。
蔵を開けた時に入ったのだろうか、
一匹の羽虫が裸電球の周りを狂ったように飛び回っていた。
つづく・・・
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『禁断の遺伝子』・・・・紅殻格子
十三・
月絵は処女だった。周一と出会うまで男を遠ざけてきたのだろう。
結婚したからには、周一と性を営む覚悟はできていたはずだ。
だが性を楽しむほどに心は癒されていなかった。
両親の行為を目の当たりにした月絵は、
体が性の喜びを感じたとしても、
それを押し殺さなければと自分を戒めてきたのだ。
鴻巣は呆然と佇む周一の肩を叩くと、写真の束を手に蔵を出て行こうとした。
「悪いがこの写真はもらって帰るよ。お嬢さんに宜しく伝えてくれ」
「か、帰るって?」
「ここへ来た目的は達した。孝蔵様にお別れもできたし、
写真を手に入れることもできたからね」
バスで来たと言ったのは嘘で、鴻巣は集落の外れに車を用意していた。
周一は鴻巣を呼びとめた。
「待って下さい。お願いがあります」
訝しがる鴻巣に、周一は結婚生活が破局を迎えていることを告げた。
原因である月絵の性への嫌悪が、
鴻巣から聞いた話と無縁でないことも説明した。
「そう言われても・・」
責任を感じているのか鴻巣は蔵の出口で躊躇した。
「助けてもらいたいんです」
周一は咄嗟に浮かんだシナリオを鴻巣に耳打ちした。
「そ、それは、いくらなんでも危険だ・・」
「一か八かのショック療法です。このまま手を下さなくても、
私達の夫婦生活は決して元には戻らないのですから」
鴻巣は腕組みしたまま唸った。
蔵を開けた時に入ったのだろうか、
一匹の羽虫が裸電球の周りを狂ったように飛び回っていた。
つづく・・・